おやぢの部屋2
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Boulez Conducts Ravel
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Pierre Boulez/
New York Philharmonic
The Cleveland Orchestra
SONY/88697689682




かつての「RCA」も完全に手中にしたSONYは、その有り余るほどのカタログを手を変え品を変えリリースしようとしています。そんな中で、最近の「Originals」という、かつてどこかで見たことがあるような名前のシリーズにちょっとそそられました。それこそ「オリジナル」のジャケットが使われているというのですね。昔LPで持っていたブーレーズのラヴェルなどは、かなり鮮烈な印象のあったものですから、改めて聴いてみるのもいいかな、と思いました。ただ、同時にリリースになった別の、少し価格帯の低いシリーズにも、同じようなカップリングのものがあるので、どちらを買おうか迷ってしまいます。そんなあたり、買う人のことを全く考えていない独りよがりなレーベルの正体を見た思いですね。
届いたものは、殆ど「2 on 1」といった感じの、LP2枚分の分量の曲が入ったCDでした。そして、ブックレットの裏表紙には、その、もう1枚のLPのジャケットがあるではありませんか。
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これが、かつて持っていたLPでした。とてつもなくかっこいいジャケットですよね。ほとんど「アート」とも言えるクオリティの高さ、この頃は、クラシックのジャケットも力が入ってました。これがブーレーズのラヴェルとしては最初にリリースされたもの、1969年に録音されていて、オーケストラはクリーヴランド管弦楽団でした。そして、表のジャケットは、1974年にニューヨーク・フィルと録音された2番目のラヴェル集のものです。さらに、「ボレロ」だけは、同じ時期に録音されたもののずっと後、1983年にやっとリリースされたものです。都合3枚のLPからのコンピレーション、これのどこが「オリジナル」だというのでしょう。
まず、LPの追体験のために、クリーヴランドで録音された「スペイン狂詩曲」から聴いてみます。これは、今聴いてもゾクゾクするような素晴らしい録音ですね。当時の「CBS」の特徴がよく分かる、とても密度の高い音です。その上に、ブーレーズの音楽はとてもメリハリがきいています。それは、オーケストラのすべてのパートを完全に掌握した上で、自分の設計通りのものをきちんと作り上げているという潔さです。最後のクライマックスの高揚感さえ、きちんと計画的に作り上げたものだという、恐るべき統率力が、ここでは発揮されています。ある意味、「再生芸術」としての一つの理想的な姿があるのではないでしょうか。これに比べると、例えば最近のエマールとのライブ録音(DG/00289 477 8770)にあまり魅力が感じられないのは、そんなハッタリのようなものが今ではばったりと消え失せてしまっているせいなのかもしれません。
ニューヨークでの録音では、クリーヴランドに比べると生々しさという点では多少物足りないものになっています。おそらく、この頃から徐々に個々の楽器ではなく全体の雰囲気のようなものを大事にするような録音の傾向になっていった、そんな過渡期の「迷い」のあらわれかもしれませんね。しかし、そんなことはお構いなしに、ブーレーズの自信に満ちた演奏は続いていました。「ラ・ヴァルス」での、いかにも人工的な「ウィーン風」のリズムなどは、ここまで徹底されることによってなんともアイロニックな趣が見えてきます。
「マ・メール・ロワ」は、最近では主流となった室内オーケストラの編成ではなく、あくまでフル・オーケストラとしての華麗な響きを目指したものです。さらに、「ボレロ」も、延々と続くクレッシェンドの計画性は、見事としか言えません。その結果、ダイナミック・レンジの設定がとんでもないことになって、最後に出てくる小節の3拍目のドラの強打は、すさまじいインパクトを与えてくれます。
思いがけず、予想をはるかに超えるCDの音を体験してしまいました。せっかくDSDのマスターを作ったのですから、こんなすごい録音こそ、ぜひともSACDで出してもらいたいものです。

CD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2010-09-09 20:20 | オーケストラ | Comments(0)