おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
Ghibli
c0039487_19313273.jpg



Dietmar Wiesner(Flutes)
Ruth Velten(T Sax)
ENSEMBLE MODERN/EMCD-011




「アンサンブル・モデルン」のメンバーは、人気があるそうですね(「アンサンブル・もてるん」)。そんなメンバーの一人のフルート奏者、ディートマー・ヴィースナーのソロアルバムです。大半が現在活躍している作曲家のものですが、最初と最後に物故者の作品がチョイスされているあたりが、なかなか的確なセンスです。その最初の曲が、まさにフルートにおける「現代曲」のさきがけとも言える、ヴァレーズの「デンシティ21.5」です。曲の途中でキイを「叩いて」打楽器のような効果音を出すという指示があるのが、「現代曲」たる所以、しかし、他の部分ではもっと「歌」があっていいものを、まるでロボットのように無表情に演奏されてしまうと、なんだか「現代音楽」の悪い面だけが強調されているような気にもなってしまいます。
2曲目、ポルトガルの作曲家エマニュエル・ヌネスの「フルート・ソロのための『アウラ』」あたりが、そんな「悪い」ものの典型かもしれません。いきなり、ジャズ・フルートみたいな「声」を伴った演奏、それからはありとあらゆる「現代技法」が登場して、確かに「フルートの可能性」を存分に広げて見せてくれてはいるのですが、それらを軽々と操っているヴィースナーのテクニックの冴えには感心しながらも、「そんなに一生懸命やって、なんになるの?」といった正直な声が聞こえてきてしまいます。これが作られた1980年代とは、そんな頑張りがそろそろ見直され始めてきた頃だったような気がします。
3曲目は、アンサンブル・モデルンの創設者、キャシー・ミリケンの「ピッコロ、フルート、バスフルートのための『ラウンド・ロビン』」。これも、基本的に頑張っている作品ですが、3種類の楽器でそれぞれの持ち味を体験してもらおうという試みは大成功、特に最後のバスフルートの迫力には、こんな大きな楽器すら軽々と操っているヴィースナーのスキルと相まって、圧倒されてしまいます。
そして、次が、ヴィースナー自身の作品「アルトフルート、テナーサックスとテープのための『ギブリ』」です。「テープ」というのは、電子音やミュージック・コンクレートのような具体音を編集した、ギンギンのサウンド・エフェクトのことです。その、まさに「熱風」とも言うべき暑苦しい音楽が収まると、そこで作曲者のアルトフルートと、若くて美人(たぶん)のサックス奏者、ルート・フェルテンのテナーサックスによる、それまでとは様子の異なるスタティックなミニマルっぽいデュオが始まります。これはなかなか気持ちの良い、「楽しめる」現代音楽ですね。最後のパートでは、「テープ」と一緒に、この二人がとてつもないユニゾンを披露してくれます。それが、なんとも「現代的」な興奮を産んでいます。
アンサンブル・モデルンのピアニストであるヘルマン・クレッツシュマーの作品は、「フルート・ソロのための『インフレーション』」です。これは、本当に1本のフルートだけが、さまざまな単音を時間の中にちりばめていく、といった趣の曲です。その単音の間の密度が徐々に濃くなっていく様が「インフレーション」なのでしょう。クセナキス的な、「メロディ」や「リズム」とは無縁の世界が広がります。
同じ1本のフルートでも、アラン・ファビアンの「フルートと、リアルタイムでデジタル処理されたフルートの音による『レゾナンス』」は、ライブ・エレクトロニクスの手法を用いた、テクノロジーなくしてはあり得ないまさに今の「現代」ならではの作品です。
そして、最後を締めるのが、1955年に作られた(トラックリストにある「1995年」というのは、間違いです)アメリカの作曲家ジェームズ・テニーの、「フルート・ソロのための『ポエム』」です。冒頭の「デンシティ」に呼応するのなら、本来なら「シランクス」なのでしょうが、これはそのドビュッシーの名曲を見事にパクった唖然とさせられる曲です。

CD Artwork © Ensemble Modern Medien
[PR]
by jurassic_oyaji | 2010-09-11 19:32 | フルート | Comments(0)