おやぢの部屋2
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Fritz Wunderlich Live on Stage
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Rieger, Karajan, Böhm, Prêtre,
Kempe, Wallberg, Krips/
Münchner Philharmoniker, Orchester der Wiener Staatsoper,
Wiener Symphoniker, Bayerische Staatsorchester
DG/00289 477 9109




1930年生まれのテノール、フリッツ・ヴンダーリッヒは、もし生きていれば今年で80歳になっていたということで、こんな記念CDが発売されました。彼の場合、1966年に36歳の若さで亡くなってしまいましたからもはや生まれたときにはすでにこの世にはいなかった、というファンの人も多いことでしょう。個人的には、最初に自分で買ったオペラのLPが、1964年録音のDGの「魔笛」でしたから、かろうじてリアルタイムで聴けた、という感じです。ほんと、このベーム盤で聴くことの出来るヴンダーリッヒのタミーノは、まさに絶品です。
1962年から1966年の亡くなる直前までの間の実際のオペラの舞台が収録された放送音源を集めたというのが、このCDです。1曲を除いてモノラル録音、当然のことながら、音質的にはとても満足のいくものではありませんが、なんと言っても大半が今回初登場の音源である、というあたりがそそられます。ファンにとっては音なんかどうでもいいんですよね。
ですから、DGの録音セッションからほんの1ヶ月後にミュンヘンで行われた公演での「魔笛」の録音があまりにひどく、肝心のヴンダーリッヒも、レコードでは絶対にあり得ない、コントロールのきかない上ずった音程に終始しているとしても、そんなことは笑って許せる寛容さが、すでにこれを聴こうという人には備わっているに違いありません(「もう聴かんよう」なんて言わない、と)。なにも、ベスト・コンディションばかりを求めずとも、こんな「失敗作」までも含めて愛するというのが、真のファンというものなのですよ。それにしても、ここで指揮をしているフリッツ・リーガーの統率力のなさには、恐れ入るしかありません。
次の「ドン・ジョヴァンニ」は、カラヤンが指揮をしたウィーン・シュターツオーパーのライブです。リーガーほどではないにしても、やはりオケはかなりひどい有様です。1963年と言えば、そろそろカラヤンの任期も終わる頃、緊張感もなくなっていたのでしょうか。それにしても、ステージでのドン・オッターヴィオは、なんと力強い声を聴かせてくれていることでしょう。あまり多くないヴンダーリッヒ体験の中では、彼の声はあくまで滑らかで甘い、という印象だったのですが、聴衆を前にすると全く別の一面を表していたのですね。彼の新しい魅力を発見です。
その次は「セヴィリアの理髪師」、ジャケットの写真が、彼のアルマヴィーヴァ伯爵ですね。これもウィーンですが、指揮がなんとカール・ベームではありませんか。ベームのロッシーニとはなんと珍しい。もっと珍しいのは、これがドイツ語で歌われていることです。モーツァルトはちゃんとイタリア語だったのに、1966年の時点でもこんなことをやっていたのですね。思いがけないことに、ここでのベームの指揮がとても素晴らしいのですよ。オケは見事にコントロールされていて、ロッシーニならではの軽さまできちんと出しています。まさに「職人」的な彼のスキルは、この時代では見事に発揮されていたのですね。ヴンダーリッヒは、というと、コロラトゥーラが散々というかわいらしさを見せていますし。
その後には、リヒャルト・シュトラウスのオペラが続きます。あいにくヴンダーリッヒのシュトラウスは今まで聴いたことがなかったのですが、これも本当に素晴らしいものでした。彼は一応「リリコ」という呼ばれ方をされているようですが、こうして聴いてみるともっと力強いドラマティックな面も存分に持っていたことが分かります。なんでも、デビューがヴィントガッセンの代役でのタミーノだったのだとか。夭折していなければ、そのヴィントガッセンのレパートリーであったワーグナーまでも手がけていたかもしれないと思えるような瞬間が、このCDでは何度もありました。なんとも、残念なことです。

CD Artwork © Deutsche Grammophon GmbH
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by jurassic_oyaji | 2010-09-25 22:08 | オペラ | Comments(0)