おやぢの部屋2
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CIMAROSA/Requiem
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Adriana Kucerova(Sop), Terezia Kruzliakova(Alt)
L'udovit Ludha(Ten), Gustav Belacek(Bas)
Kirk Trevor/
Lucnika Chorus, Capella Instropolitana
NAXOS/8.572371




モーツァルトと同時代のオペラ作曲家ドメニコ・チマローザが、サンクト・ペテルブルクでエカテリーナ女帝に仕えていた時期の1787年に作った「レクイエム」です。あと4年もすると、モーツァルトが同じテキストで曲を作りかけることになりますね。このレーベルならではの珍しい曲ですが、なんでも1968年に録音されたヴィットリオ・ネグリのレコードによって、初めてこの曲の存在が世に知られるようになったのだそうですね。あ、もちろん正規の録音、モグリではありません。
全体の長さは50分ちょっと、モーツァルトのものと同じぐらいでしょうか。ただ、テキストには、普段はカットされることの多い、「Graduale」と「Tractus」が、「Kyrie」のあとに置かれています。そして、そのあとには型どおり「Dies irae」で始まり「Lacrimosa」で終わる「Sequentia」が来るのですが、普通は何曲かに分けられるこの長大なテキストの区切り方が、モーツァルトとはかなり異なっています。というか、こちらで「Judex ergo」とか「Inter oves」などというタイトルの曲が出てくると、そんな言葉があったのか不安になってくるのですが、それは単にモーツァルトが1曲分として選んだテキストの途中から、こちらは始まっている、というだけのことなのでした。逆に、モーツァルトが曲の頭に持ってきた「Confutatis」などは、こちらでは曲の途中になっているので、タイトルとしてはなくなっています。
編成はソリスト4人に合唱とオーケストラというものですが、オーケストラに入っている管楽器はホルンだけのようですね。ですから、全体は弦楽器だけのモノクロームな音色に支配されています。
ここで演奏しているのは、イギリス出身の指揮者トレヴァーを除いては、すべてスロヴァキアのミュージシャンたちです。オーケストラのスキルは決して高いものではありませんし、合唱もかなりもっさりとした肌触りですので、聴いていて心を奪われるということは殆どないのですが、それには目をつぶって虚心に作品と向き合うことにしましょうか。
Introit」は、大げさな身振りではない淡々とした曲調で始まります。ただ、それは最後まで続くのではなく、途中でアップテンポになって少し明るくなります。そんな風に、ごく短い時間で曲想が変わっていくのが、どうやらこの曲の特徴のようです。「Kyrie」になると、後半にはフーガが現れますが、それはあまり厳格なものではなく、あくまでシンプルな装いの中でのことです。
先ほどの「Sequentia」は、全部で10曲に分かれています。1曲ごとに合唱とソロとが交互に現れるという構成が基本になっています。割と淡泊な合唱の間に、ドラマティックなソロが入る、といった趣でしょうか。そのソロは、いずれもキャッチーなもの、メロディ・メーカーとしてのチマローザの面目躍如といったところです。最初に出てくるソプラノのソロ「Tuba mirun」を歌っているクチェロヴァーは、とても伸びのある魅力的な声で、それまでのちょっともたつき気味だった音楽を見事に華やかなものに変えてくれます。それ以後も、彼女が歌うところでは音楽全体が引き締まって聞こえます。
他のソリストでは、この部分の最後の方、「Preces meae」で初めて登場するテノールのルダの、朗々たる歌声に圧倒されてしまいます。あまりにもハイテンションのため、それがこの曲にふさわしいかは疑問ですが。
ところで、その少し前、「Recordare」でアルトのクルチュリアコヴァーが歌い始めると、それがなにかと非常によく似たものであることに気づくことでしょう。それは、モーツァルトの作品の「Benedictus」。もちろんその部分はジュスマイヤーによって補作されていますから、もし「パクリ」だとしても、それはモーツァルトが咎められるものではありません。
こんなユルいオケと合唱に、ハイテンションすぎるソリストというアンバランスな布陣ではなく、もっと全体が緊張感にあふれた演奏できちんと聴いてみたいものだ、と切に願いたくなるようなCDでした。

CD Artwork © Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2010-09-29 20:33 | 合唱 | Comments(0)