おやぢの部屋2
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NAXOS Navigator/ナクソス攻略ブック
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学研パブリッシング刊
ISBN978-4-05-404613-9




お馴染み、NAXOSという個性的なレーベルが、再来年で創業25周年を迎えるそうですね。それを記念して、こんな本が出版されました。B5127ページ、写真や図版もたくさん使われて、1500円(税抜き)という価格相応の外観を持っています。
ところが、じっくりと読み進んでいくと、次第に頭の中は疑問符(?)だらけになってきましたよ。最初にあるのは、創業者のインタビュー、なんだか「会社案内」みたいなパンフレットによく載っているもののようには思えませんか?そして、それに続くのは、今扱っている「商品」の案内です。まずはお馴染みのCD。膨大なレパートリーの中から「これは」と思われるようなものが紹介されています。これって、普通は「カタログ」とか呼ばれているものではないですか?そのあとには、おそらくこの会社が今最も力を入れているであろう、ネットでの音楽ライブラリーの紹介と使い方。これも、言ってみれば「取扱説明書」のようなものではないでしょうか?
そう、浮かんできたさまざまな「?」が行き着いた先は、「これは、お金を出して買うようなものではないのではないか?」という結論だったのです。まさにこれは、宣伝用に無料で配布されるチラシやパンフレットと寸分違わないものなのですよ。それをお金を出して買わせようとするなんて、いったいこの出版社(というよりは、それを出させたこのレコード会社)は、何を考えているのでしょう。まさに、勘違いの極みです。
確かに、最初のCD紹介のコーナーはていねいに作られています。あるいは、全編この調子でもっと分量が多くなっていれば、かろうじて「書籍」としての体面は保てるかな、というぐらいの、ただのパンフにしておくにはもったいない、読み物としての価値が認められるものです。下着としての価値も(それは「パンツ」)。そんな中で、このレーベルがかつて一つの「目玉」にしていたものの、最近はもう放棄してしまったかに見える日本人作曲家のシリーズが、もうしばらくすると再開される、というニュースは嬉しいものでした。
ただ、その他の、この本の大多数を占めるコーナーは、もっぱらそのようなパッケージ商品としてのCDではなく、デジタル・コンテンツとしての商品の案内に終始しているのが、ちょっと不安を抱かされるところです。ここで声高に叫ばれているのが、「もうCDの時代は終わった」という、ヒステリックなまでのお題目です。このような「パンフレット」にはよく登場する、各界で活躍している著名人によるコメントも、まるで口裏を合わせたようにそんな「新しい音楽の聴き方」を推奨しまくっていましたね。今のIT社会、棚いっぱいのCDを抱えるのはもはや時代遅れ、これからは、好きな時にどんな曲でもあらゆる場所で聴くことこそが最先端のトレンドだ、とね。
そう、この本を通じて、この会社が推奨しているのは、まさに音楽の「使い捨て」ではありませんか。「物」としてCDを手元に置いてこそ、良いものでも悪いものでもきちんと向き合えるのでは、と考えるクラシック・ファンは、決して「時代遅れ」ではありません。
そもそも、このNML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)というサービスは、まともなクラシック・ファンにとっては欠点だらけの代物です。なにしろ、「ツァラトゥストラ」のように、連続して演奏される曲の間にトラックの切れ目があったりすると、その部分で演奏が止まってしまうのですからね。音質だって128kbpsではCDには到底及びません。これは、単にサンプルとしての用途しか望めないもの、とても鑑賞に耐えうるものではありません。作曲者の表記もデタラメだらけですし。
もしこの会社が、本気でNMLCDの代わりを務めることが出来ると考えているのだとしたら、そんなところが作るCDなどは決して買いたくはなくなってしまいます。この本は、まさに自分自身の首を絞めようとしているこのレコード会社の愚かさをさらけ出したもののように見えます。

Book Artwork © Gakken Publishing Co., Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2010-10-01 21:13 | 書籍 | Comments(0)