おやぢの部屋2
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VERDI/Messa da Requiem
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Luba Orgonasova(Sop), Anke Vondung(MS)
Alfred Kim(Ten), Carlo Colombara(Bas)
Helmuth Rilling/
Gächinger Kantorei Stuttgart
Radio-Sinfonieorchester Stuttgart des SWR
HÄNSSLER/CD 98.606




リリンクという人は、なんか「草食系」という感じがしませんか?それがもろ「肉食系」のヴェルディのレクイエムを振るというのは、ちょっとミスマッチな気がしてしまいます。彼はもちろん宗教音楽のオーソリティではあるのですが(「僧職系」、ですね)、ホームグラウンドはなんといってもバッハを中心としたバロックもの、といったイメージもありますからね。しかし、彼の場合は今作られたばかりの「現代曲」でもバリバリ演奏してしまうのですから、当然ヴェルディでもなんなくレパートリーに入っているのでしょうね。
何よりも、彼は、この曲の「元ネタ」である、13人の作曲家による「合作」レクイエムの「初演」をした人なのですから、そもそもヴェルディとは浅からぬ因縁があるわけです。1868年に亡くなったあのロッシーニを追悼するために、ヴェルディが音頭をとって当時のイタリアを代表する作曲家に呼びかけて作られた「レクイエム」は、1869年に初演を迎えるべく準備が進められ、スコアも完成したのですが、「オトナの事情」で結局演奏されることはありませんでした。それを1988年に「初演」したのが、リリンクだったのですね。その時の録音はCDで出ていましたし、最近DVDもリリースされたようです。しかし、そこでヴェルディが担当した「Dies irae」以外は、正直つまらない曲でしたね。それ以降、この曲を録音した人がいたかどうかは、寡聞にして知りません。
おそらくリリンクは、この「ロッシーニ・レクイエム」を演奏したときから、当然ヴェルディのレクイエムを演奏して録音する機会をねらっていたのではないでしょうか。それから20年以上経った2009年に、まさに満を持して、ほぼ完璧な演奏者とともにこの曲を録音することが出来ました。
ソリストには、スロヴァキアのオルゴナショヴァー、ドイツのフォンドゥンク、韓国のキム、イタリアのコロンバーラという、国際色豊かな面々が集められています。そして、オーケストラはノリントンのもとでランクが高められたシュトゥットガルト放送交響楽団、もちろん合唱は、リリンクの手兵、ゲヒンガー・カントライです。
オーケストラは、ノリントンの時には例の「ノン・ビブラート」を強いられていますが、他の指揮者では普通に「コン・ビブラート」で演奏しています。しかし、おそらくノリントンは、ビブラートを取ってごまかしのきかないシビアな状態になったときに、きっちり「ハモる」ような訓練を、このオケにみっちり施していたのでしょうね。そこで得られたであろう精密なハーモニー感は、ビブラートをかけた時でもえもいわれぬ美しい響きを醸し出すことになりました。そんな、「ピュア」な響きを、何度味わえたことでしょう。この曲は、とにかく音の大きさの振幅が極端ですから、ともすれば静かになったところで神経が行き届かないことがありがちなのですが(その最も危ないところが、「Offertorio」冒頭のチェロの上向スケール。さる地方オケが、見事に醜態をさらしていました)、ここでは、弦楽器のアンサンブルが出てくるところでは常に至福の喜びを味わえます。
ソリストの中では、初めて聴いたキムの確かな表現力には、感服してしまいました。最初の「Kyrie」という一声から、もう圧倒されてしまいます。そして、そんな「張った」声だけではなく、「抜いた」声のなんと美しいことでしょう。それは、「Offertorio」の中の「Hostias」という部分、ここでこんな繊細な歌い方を聴いたのは、初めてのような気がします。
ところが、それに続いて5度下で同じメロディを歌い出すコロンバーラの、なんという存在感のなさでしょう。声に輝きはないし、何よりも音程がひどすぎます。「画竜点睛を欠く」とは、まさにこのようなことを指し示すのでしょうね。
闇雲に疾走する印象の強い「Dies irae」も、リリンクは堅実に仕上げています。やはり彼は「草食系」でした。

CD Artwork © Hänssler Classic
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by jurassic_oyaji | 2010-10-05 22:53 | 合唱 | Comments(0)