おやぢの部屋2
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BUXTEHUDE/OEuvres pour Orgue





André Isoir(Org)
CALLIOPE/CAL 9725



フランス北部に、ロッシーニの「ランスへの旅」というオペラで有名なランスという都市があるざんす。そこにあるサン・レミ・バジリカ教会は、1000年以上の歴史を持つと言われている由緒ある教会です。もちろん、かつてここにはオルガンが設置されていましたが、1918年に戦災によって破壊されてしまっていました。1991年からはじめられたオルガン再建のプロジェクトは、ユネスコの世界遺産にも指定されているこの建物にいかに新しい楽器を調和させるか、という点に最大の注意をはらわれて進行することになります。その成果として、2000年にベルトラン・カティオーの手によって作られたオルガンは、あたかも一つの装飾品のように、礼拝堂の石造りの回廊の壁面に見事に溶け込んでいたのです。3段マニュアルとペダル、総ストップ数45というこの中規模の楽器は、教会内のアコースティックスにもマッチした、繊細で透明な響きを醸し出しています。
オルガンの録音では定評のあるCALLIOPEによって収録されたこのアルバムでは、バッハの先輩格にあたるブクステフーデの作品が、もはや「重鎮」と呼ぶにふさわしいオルガニスト、アンドレ・イゾワールによって演奏されています。ここで選ばれた曲目は、非常にバラエティに富むもので、ブクステフーデのオルガン作品の、ほぼ全てのスタイルを知ることが出来るようになっています。バッハ自身も大きな影響を受けたとされるブクステフーデですが、彼の作風は、しかし、後のバッハとは大きく異なっていることが、このラインナップを味わうことによって、実感されるのではないでしょうか。
曲目の大半を占めるのが、「コラール」です。教会で歌われる賛美歌をオルガンによって演奏するもの。ここでは、素のメロディーラインを生かしたきわめてシンプルな楽想が、心を打ちます。バッハで言えば「オルゲルビュヒライン」に見られるような可愛らしさ、そこには、「コラール・プレリュード」のような、肥大化された複雑な様相は見られません。さらに、「今ぞ来たれ、異邦人の救い主よ」BuxWV.211では、フランスの作曲家が好んで作った「ノエル」を思い起こさせられるほどの生き生きしたテイストが満ちあふれています。
「前奏曲とフーガ」という、バッハではおなじみのジャンルでも、その違いは際だっています。バッハの場合、「前奏曲」と「フーガ」は厳然と切り離されており、中でも頑強な建築物を思わせる「フーガ」の、ほとんど有無を言わせぬほどの威圧感には、誰しも圧倒されてしまいます。しかし、ブクステフーデでは、その両者は渾然一体となって、いとも軽やかに見え隠れしているのです。その結果現れるのが、瞬時に景色を変えるパースペクティブ、まるでプロモーション・ビデオのようにめまぐるしいそのカット割りは、バッハのある種押しつけがましい厳格さからは、決して見えては来ないものなのです。
「シャコンヌ」あるいは「パッサカリア」でも、やはりバッハのそれを連想することはあり得ない、軽妙さを味わえるはずです。このような際だった違い、もしかしたら、この演奏がフランス人によってフランスの楽器を使って行われたことと、無関係ではないのかもしれません。
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by jurassic_oyaji | 2005-04-18 19:58 | オルガン | Comments(0)