おやぢの部屋2
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MOZART/Cosi Fan Tutte
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Malin Hartelius(Fiordiligi)
Anna Bonitatibus(Dorabella)
Martina Janková(Despina)
Javier Camarana(Ferrando)
Ruben Drole(Guglielmo)
Oliver Widmer(Don Alfonso)
Sven-Eric Bechtolf(Dir)
Franz Welser-Möst/
Orchestra and Chorus of the Zurich Opera House
ARTHAUS/101 495(DVD)




小澤征爾の後釜として、ウィーン国立歌劇場の音楽監督となったウェルザー・メストの、前任地でのほぼ最後の仕事となった「コジ」の映像です。このDVDはもちろん輸入盤ですが、ケースには字幕はイタリア語、英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語としか表示されていません。しかし、メニューを開くと、そこにはしっかり「日本語」も選択肢に入っています。これは日本向けに特別に付けさせたものなのでしょう。確かに、日本で作った「帯」には「日本語字幕つき」と書いてありましたね(お、びっくり)。これは、全く期待していなかっただけに、新鮮なサプライズでした。しかも、以前同じレーベルでみられたようないい加減なものではなく、とてもきちんとした字幕でしたから、喜びもひとしおです。
いつもそうなのか、モーツァルトだからなのかは分かりませんが、ウェルザー・メストはピットにもぐった形ではなく、客席から上半身は完全に見えるぐらいの高い位置で指揮をしています。従って、序曲の間だけではなく、シーンの最中でも彼の指揮ぶりはよく見ることができます。そんな時に、彼のとてもしなやかな指先などを見ていると、この人は思ったほど悪い指揮者ではなかったことが分かってきます。ここでは緩急を自在に操って、とても立体的なドラマを、音楽で語ることに成功しているのではないでしょうか。
歌手たちも、ハルテリウスやヴィドマーといったベテランを中心に、実力者揃いのラインナップです。デスピーナ役のヤンコヴァーは、その中でもひときわ光っていました。フェランド役のカマレナあたりが穴といえば穴でしょうか(この人、「外国人」に変装すると、朝青龍そっくりなので、笑えます)。
演出の面では、ありがちな「読みかえ」などは、とりあえずないものだ、と思いましょう。衣装は本来の時代設定、男たちはかつらを着けたロココ風のスタイルで現れます。もちろん、女たちは胸を大きく開け、腰をコルセットで締め付けたドレスを着ています。ただ、ステージのセットは一切の装飾を排したシンプルなものです。ど真ん中に緑の葉をたわわに付けた大きな樹が置かれ、そこから左右対称に白い壁面が広がっています。おそらく、このステージのコンセプトは「シンメトリー」だったのでしょう。出演者の動きもかなり「シンメトリー」が意識されているようですね。結局、この話の骨格である疑似スワッピング=シンメトリーという発想なのかもしれません。
ところで、「コジ」といえば、その結末がどうなるのか、という点が常に興味の対象となってきます。こちらにまとめたように、そこには今までさまざまな「解決策」が多くの演出家によって示されてきていました。しかし、今回のベヒトルフのプランは、そのどれとも異なっていて、驚かされます。(ここからはネタバレになりますので、文字の色を背景と同じにしておきます。読みたい方は選択して反転させて下さい)

それは、第2幕のフィナーレ第16場でグリエルモがつぶやく「ああ!毒を飲めばいい!この恥知らずの女狐ども」というセリフを、そのまま実行させる、という手でした。第1幕のフィナーレ第15場で男たちが「飲んだフリ」をした毒の入った瓶が、なぜかステージの上に置いてあったのを見つけたグリエルモは、自分のグラスのシャンパンを飲み干し、そこにこの「毒」を注ぐのです。幕切れは、4人揃って仲直りの杯を干すというプランですが、その毒の盛られたグラスを持ったのはフィオルディリージ、彼女は訳も分からぬまま、目をむいてその場に倒れ、こときれるのです。

騙したのはあくまで男たちですが、それを真に受けて「不貞」をはかった女たちは、決して許されることはなかったのです。男の嫉妬って、怖い・・・。

DVD Artwork © Arthaus Musik GmbH
by jurassic_oyaji | 2010-10-13 20:09 | オペラ | Comments(0)