おやぢの部屋2
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WAGNER/Rienzi
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Torsten Kerl(Rienzi)
Camilla Nylund(Irene)
Kate Aldrich(Adriano)
Philipp Stölzl(Dir)
Sebastian Lang-Lessing/
Chorus and Orchestra of the Deutsche Oper Berlin
ARTHAUS/101 521(DVD)




ワーグナーの初期の作品、「リエンツィ」といえば、「演奏するのに6時間を要する冗長な作品」というイメージが定着、なかなか実際に上演されることはありませんでした。全曲盤のCDは確か1種類は出ていたはずですが、映像は今までは存在していなかったのではないでしょうか。ですから、おそらく今回初めての映像がDVD(と、ブルーレイ)、しかも日本語字幕付でリリースされたのは、画期的な出来事です。序曲だけは良く知られていても、その内容は誰も知ることはなかったという、いわば「幻の」作品が、これで陽の目を見ることになったのですからね。
なにしろ「6時間」ですから、DVDだったら3枚組かな?と思ってパッケージを見てみたら、メイキング映像を含めて2枚組、しかもオペラ自体は156分、2時間半ちょっとというのですから、なんだか拍子抜けしてしまいました。ちっとも長くないじゃん。実は「6時間」というのは休憩を含めた上演時間で、正味だと4時間とちょっとなんですね。それにしてもやはり長いことに変わりはなく、これは全5幕のものを、適宜カットを施して「2部」にまとめたバージョンだったのです。現在のヨーロッパのオペラハウスでは、これに近い形で上演されることが普通のスタイルになっているようですね。どうやら、このぐらい切りつめた方が音楽的にも、そしてストーリーもすっきりして、作品の肝心の部分も損なわれることはないそうなのです。
今年、2010年にベルリン・ドイツ・オペラでのプロダクションを任されたシュテルツルは、ここのアーティスティック・プロダクション・マネージャーのクリスティアン・バイアーとともに、この「ダイエット」作業を行いました。メイキング映像では、歌手たちが「これは歌いたい」などと言っていて、それが採用されていますから、それは現場で出演者たちの意見も聞きながらの作業だったようですね。
「リエンツィ」の初体験(「離縁」はまだ体験してませんが)、それはなかなかのインパクトを与えてくれるものでした。本来の舞台はローマ時代、市民階級の一人の男が「護民官」となって(この作品のサブタイトルが「最後の護民官」でしたね)民衆に自由を与える指導者として君臨するのですが、やがて民衆の心は彼から離れてゆき、最後は殺されてしまうというプロットです。これは、なんの読みかえをしなくても、前世紀にドイツで起こったことをそのまま当てはめることが出来ます。現に、20世紀の「指導者」その人が、このオペラを我が身に置き換えて多いに堪能していた、という「事実」もあるそうですから。
もちろん、シュテルツルは、そのアイディアをとことん推し進めています。なんと、あのリーフェンシュタールの映画のパロディまで登場しますよ。そして、その「指導者」を最初は持ち上げ、のちには没落させることになる民衆には、かなりの力を入れたことでしょう。オペラハウスの正規の合唱団だけではなく、エキストラの団員をあわせて120人ものメンバーが、舞台狭しと動き回ります。異様にテンションの高いオーケストレーションと相まって、これでもかと言うぐらいの迫力がこの合唱からは押し寄せてきます。
音楽自体はそんな迫力が勝った「若書き」であるのは否めませんが、後のワーグナーのモチーフがあちこちに顔を出しているのがほほえましいところです。本来の第2幕の最後の合唱などは、「タンホイザー」そっくりですし。
ソロも、やはりハイテンションの声を要求されます。タイトルロールのケルルが、それに見事に応えて、最初から最後までものすごい存在感で音楽をリードしています。殆ど出ずっぱりですから、さすがに最後はいくらかバテ気味でしたが、そこで歌われる、おそらく彼自身のリクエストでカットされずに済んだ、序曲にもあるテーマを使ったリリカルなアリアは、絶品でした。

DVD Artwork © Arthaus GmbH
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by jurassic_oyaji | 2010-10-15 20:34 | オペラ | Comments(0)