おやぢの部屋2
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BACH/Passion selon Saint Matthieu
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H. Cuénod(Ev), H. Rehfuss(Jes), M. Laszlo(Sop)
H. Rössel-Majdan(Alt), P. Munteanu(Ten), R. Standen(Bas)
Hermann Scherchen/
Wiener Akademie-Kammerchor
Orchestre de l'Opéra de Vienne
TAHRA/TAH 701-703




元々はウェストミンスターの1953年の音源ですが、TAHRAという、ヒストリカル音源を復刻させたーら右に出るものはないと言われているフランスのレーベルによってマスタリングされたものが登場しました。
フランスのレーベルですから、曲目や演奏家の表記はすべてフランス語になっています。オーケストラは「ウィーン歌劇場管弦楽団」、実体はウィーン・フィルなのでしょうが、契約の問題などでこのような名前を使ったのでしょうか。そして、合唱団が「ウィーン・アカデミー室内合唱団」となっていますが、これは先日ミュンヒンガーの「ロ短調」で素晴らしい演奏を聴かせてくれた「ウィーン・アカデミー合唱団」とは全く無関係な団体の様ですね。基本的な合唱の訓練などなにも受けてはいない、もしかしたら、録音のための寄せ集めの団体だったのかもと思えるほどのひどさです。
そんな、とんでもない合唱が最初の合唱を歌い始めると、そのテンポがまるで最近の「ピリオド系」の演奏家のように速いのに、ちょっとびっくりさせられます。この時代に、こんなテンポで演奏している人がいたとは。実は、添付のライナーは、今回のリリースに合わせて書き下ろされた最新のものなのですが、そこでは「マタイ」の演奏史のようなノリで、今までの録音の演奏時間の比較などが行われています。かつてはクレンペラーのように223分もかかっていたものが、アーノンクールのような「バロック」の指揮者の出現で173分などという「速い」演奏が広まり、最速はコープマンの154分だ、といった具合です。それによると、このシェルヘンの演奏時間は199分、この5年後に録音されたカール・リヒターが197分ですから、全体ではそんなに速いわけではありません。なぜそんなことになっているかは、もうしばらく聴いていると分かります。速かったのは最初の曲だけで、それ以降はほぼ標準的なテンポを取るだけではなく、なんと、とてつもない、ほとんど冗談のような「遅い」テンポになっているところがどんどん出てくるのですよ。まずは、「受難のコラール」として有名な15番と17番のコラールです。そのような深い意味を持つ曲をとことん歌いこもう、というのが、シェルヘンの基本的なコンセプトなのでしょうね。そういえば、そこまでにも、イエスのレシタティーヴォの部分ではかなり丁寧に歌わせていました。しかし、このコラールをこのテンポで演奏するためには、合唱団のスキルがあまりにも不足しています。気持ちはよくわかるのですが、こんな、それぞれのメンバーが好き放題にビブラートたっぷりで「吠え」続けているような合唱団が、のたうちまわるように演奏したとしても、それはうっとうしいだけのこと、おそらく指揮者が求めたであろう緊張感にあふれた切なさのようなものは、全く伝わってくることはありませんでした。
極めつけは、ご想像通り、最後の合唱です。いやあ、これはすごい。普段聴き慣れたもののまさに半分の速さでしょうか、それがこのだらしない合唱で延々と続くのですから、これはもう拷問に近いものです。
ただ、そんなひどい合唱さえ我慢すれば(そんなことは不可能だ、とはおっしゃらず)、たとえばアルトのレッセル・マイダンなどの歌うアリアは、本当に心にしみます。しかし、エーベルハルト・ヴェヒターとかペーター・ラッガーといった、後年大活躍を見せる大歌手が、ピラトやペテロのような「端役」を歌っていたなんて、なんと豪華なキャスティングだったのでしょう。オーケストラも、ウィーン・フィルの名手たちが素晴らしいソロを聴かせてくれています。49番のソプラノのアリアでのオブリガートフルートで、まさに当時のウィーン・フィルの音色を披露してくれているのは、巨匠ハンス・レズニチェクのはずです。ライナーに「カール・レズニチェク」とあるのは、なにかの間違いでしょう。

CD Artwork © TAHRA
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by jurassic_oyaji | 2010-10-24 22:55 | 合唱 | Comments(3)
Commented by 山ちゃん at 2010-10-26 14:28 x
いつも精力的なコメントに感心いたします。
ウェストミンスターには、ウィーンフィル=ウィーン国立歌劇場管弦楽団を雇える財力はなく、「ウィーン歌劇場管弦楽団」もフォルクスオパーのオケと考えられています。「看板に偽りはなし」ということなのでしょう。
Commented by jurassic_oyaji at 2010-10-26 14:32
山ちゃんさま。コメントありがとうございます。
(「マタイ」へのコメントですね)
バリリやマイヤーホーファー、そしてレズニチェクは、エキストラだったのでしょうか。まあ、ソリスト同士のやり取りはあったのかもしれませんね。
Commented by 山ちゃん at 2010-10-26 14:34 x
バリリやレズニチェクのような「一本釣り」は、当時のドルの力を持ってすれば難しくなかったのでは。
事実、彼らはソリストとしての録音がウェストミンスターにありますし。