おやぢの部屋2
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楽器から見るオーケストラの世界
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佐伯茂樹著
河出書房新社刊
ISBN978-4-309-27218-4



本屋さんの音楽書コーナーに立ち寄ったところ、なんだかカラフルな本が平積みになっていました。隣にあったのが、なんと「名曲探偵アマデウス」のカラー版ノベライズというのですから、こちらもいかにも、最近流行の初心者向けのクラシックのガイドブック、と言った体裁に見えてしまいます。これで、付録にナクソス音源のCDでもついていたら、完璧に鼻持ちならないガイドブックになっているところですが、ちょっと違う、なにかマニアックな匂いがしたもので、手に取ってみる気になりました。
確かに、その「勘」はあたっていたようです。「マニアック」と感じたのは、豆腐料理(それは「ヒヤヤッコ」)ではなく、おそらくその表紙の写真からだったのでしょう。「なんか違う」というような気がしたのですが、よくよく見てみると、ホルンはウィンナ・ホルン、オーボエもウィーン・タイプ、トランペットはロータリー、ティンパニは手動式と、これはウィーン・フィルだけで使われている楽器を集めたものではありませんか。クラリネットだけ、エーラー管ではなくベーム管というのが不思議なところですが、これだけのこだわりはハンパではありません。
この本は二部構成になっていて、前半はオーケストラの歴史、後半は世界各地のオーケストラの特徴を、それぞれ使われている楽器を詳細に紹介することで明らかにしています。
まず、「歴史」では、バロック期のヴィヴァルディから始まって、20世紀のラヴェルまで、それぞれの作曲家の作品のスコアを見せながら、オーケストレーションの「隠し味」のようなものを紹介してくれています。そして、なんと言ってもそれぞれの時代にしかなかった「古楽器」が、きれいな写真で味わえるのは、たまりません。フルートなども、しっかりその時代時代に使われた異なるタイプのものが使われていますから、安心できますよ。もう、そこからは、著者の「意地」みたいなものも感じられてしまいます。おそらくどこからも突っ込まれないような、完璧なものを目指したのでしょうね。
そこで、初めて知ったのは、今でも慣習的に行われているクラリネットの「持ち替え」の起源です。倍音構造上、昔の楽器では、特定の調しか吹くことが出来なかったので、フラット系にはB管、シャープ系にはA管を使って、対応していたのですね。ホルンが、クルーク(替え管)を取り替えて別の調に対応していたのと同じことを、クラリネットでもかつては行っていたのです。現代の精密な音程を出せる楽器でも、やはりそのようなことが必要なのでしょうね。ほんと、演奏中にマウスピースを抜いて別の管に付け替えているクラリネット奏者の早業には、いつも感心してしまいます。
そして、後半のオーケストラの違いによる楽器の違いも、興味深いものです。いや、そういう特定の楽器のことは知ってはいたのですが、それの写真と、細部にわたっての相違点を詳しく述べているこんな本には、初めて出会ったものですから、今まで漠然と感じていたものを、しっかり実体のあるものとして、知識の片隅にしまい込むことが出来ましたよ。例えば「オフィクレイド」と「チンバッソ」との関係を、これほど明瞭に定義づけているものなど、今までにあったでしょうか。この本の知識がすべて頭に入れば、オーケストラの楽器に関してはどこに行っても恥ずかしくない立派な人になれるはずです。
そんな、どこをとっても「隙」のない本なのですが、1箇所だけ、ケチを付けてもいいですか?それは、「ドイツ型トランペット」として紹介されている、ロータリー・トランペットの写真です。通常のピストン式の楽器と同じような、「縦」になった写真なのですが、演奏するときには「横」にして構えるので、ちょっと違和感があるのですよ。このまま吹いたのでは、右手がとても辛いな、みたいな。

Book Artwork © Kawadeshobo-Shinsha
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by jurassic_oyaji | 2010-10-30 22:53 | 書籍 | Comments(2)
Commented by パソンカバソトソ at 2010-10-31 11:01 x
「ッ」しか合ってませんが…
いつもダジャレで吹き出してしまいます。
Commented by jurassic_oyaji at 2010-10-31 22:31
パソンカバソトソさん。
いつもHNで吹き出してしまいます。
2分ぐらい考えてしまいました。