おやぢの部屋2
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RZEWSKI/The People United Will Never Be Defeated
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Kai Schumacher(Pf)
WERGO/WER 6730 2




この前のCARUSのように、このWERGOというのもSCHOTTという楽譜出版社の一部門としてのレーベルです。LP時代からの長い歴史と、豊富なカタログを誇る、現代音楽にはなくてはならないレーベルでしたね。ただ、最近はあまり勢いが感じられないのは、なぜなのでしょう。
当然のことながら、メインは自社で出版した楽譜を使って演奏されたものになります。ところが、今回の「不屈の民」は、SCHOTTではなく、ZEN-ON、つまり、日本の全音から出版されたものでした。確か、今のSCHOTTの日本法人である「日本ショット」は、かつては「全音ショット」という名前だったような気がするのですが、その頃の提携関係が今も続いているのでしょうか。いずれにしても、この曲は今だと税込み2100円ほどで、簡単に買うことが出来ますから、鑑賞のお供に、あるいはご自分で演奏してみるためにお手元に置いておくのは、いかがでしょうか。
2009年の最新録音は、ドイツの若手、カイ・シューマッハーによって行われました。なんでも彼は7歳でピアニストとしてデビュー、15歳の時にはショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番をオーケストラと共演しているといいますから、殆ど「神童」と呼べるようなスタートを切っていたのですね。しかし、この方、写真を見るとなかなか突っ張った風貌で、とてもクラシックのピアニストとは思えません。金髪を逆立てて、まるでパンク・ロッカーのような「アブナイ」人に見えてしまいます。確かに、彼は学生時代はクラシックのコンサートになどは行かず、まさに「パンク・ロック」に傾倒していたというのですから、そのまんま、ですね。あ、小島よしおやってたわけではないですよ(それは「パンツ・ロック」)。
いや、実は、彼は現在でも「トラストゲーム」というロックバンドのキーボード奏者/エレクトロニクス担当として活躍しています。おそらく、そのスタンスそのままに、「現代音楽」のシーンでもユニークなコンサートを行っているようです。クラシック、現代音楽、そしてロックを並列に融合させるという試み、なかなか楽しそうですね。
そんなシューマッハーくんによって、おそらく彼が生まれる前に作られた「不屈の民」は、新たな側面を見せることとなりました。この変奏曲のテーマであるチリの革命歌が最初に提示されるときに、そこからはとても暖かい情感が伝わってきたのです。このテーマ、革命歌とは言っても、実はかなり軟弱なメロディを持っていて、Aメロの後半などは例えばあの韓国ドラマ「冬のソナタ」のテーマ曲と全く同じコード進行になっています。そう、このパンク野郎のピアノからは、まさにヨンさまとチェ・ジウの純愛物語が感じられてしまったのですよ。
こうして、「冬ソナ変奏曲」(ウソ)は、もはやとても親しみのあるクラシックスとして、なんの抵抗もなく受け入れられる素地が作られてしまいました。いろいろ難しいテクニックやアイディアを盛り込んではいますが、本当はこんな楽しい曲だったんですね。
全部の変奏が終わってからの、自由な「カデンツァ」は、なにかとてつもなく小さな音で始まったと思ったら、ついには音がなくなってしまいましたよ。これって、もしかしたらケージのパロディ?しかし、それは「4分33秒」続くことはなく、ほんの一瞬で終わってしまったので、一安心です。しかし、そのあとで「テーマ」が現れたときの驚きといったら。それは、ほんの1時間前に聴いたものとはガラリと変わってしまった、まるで瀕死の病人のような弱々しいものだったのです。これが、おそらくシューマッハーくんのこの作品に対する「回答」だったのでしょうか。今の世の中、「革命」なんてものは幻想に過ぎないのさ、という。
この録音には、ジェフスキその人が立ち会っていました。その写真がライナーにありますが、孫ほどのピアニストを見つめるその目は、どこか寂しげです。

CD Artwork © Schott Music & Media GmbH
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by jurassic_oyaji | 2010-11-09 23:39 | 現代音楽 | Comments(0)