おやぢの部屋2
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BACH/The Brandenburg Concertos
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Sigiswald Kuijken
La Petit Bande
ACCENT/ACC 24224(hyhbrid SACD)




ジギスヴァルト・クイケンにとっては、これが3度目の「ブランデンブルク」の録音なのだそうです。最初は1976年(SEON)と言いますから、「ピリオド楽器」の黎明期ですね。ここでは、グスタフ・レオンハルトやフランス・ブリュッヘンといったビッグ・ネームが指揮をしていて、ジギスヴァルトは演奏者として参加していましたが、次の1993年の録音(DHM)では、「ラ・プティット・バンド」を率いていました。今回2009年の録音も同じ団体ですが、メンバーは大幅に替わっていることでしょう。そして、ジギスヴァルトが担当している楽器も、ヴァイオリンから「ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ」に変わりました。彼の代わりにソロ・ヴァイオリンを弾いているのはお嬢さんのサラ・クイケン、世代が変わった、ということですね。
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「スパッラ」を重用するようになったのは、彼らの最近の流れからは、当然のことでしょう。もはや、彼らはバッハの曲(いや、ヴィヴァルディでさえ)では「チェロ」という楽器を使うことはなくなってしまったのでしょうね。この写真は「3番」のリハーサルの様子ですが、真っ正面に「スパッラ」が3台並んでいるのは壮観です。その隣に、普通の「チェロ」があるではないか、と思われるでしょうが、これは「バス・ド・ヴィオロン」という別の楽器なのですね。これも「スパッラ」同様、クイケンたちが最近よく使うようになっている「新しい」(いや、もちろん「古い」のですが)楽器です。バッハの場合、「チェロ」の楽譜の下段に、記譜上は殆どチェロと同じ音域で「ヴィオローネ」という指示のパートがありますが、今まではここをコントラバスで「1オクターブ低く」演奏することが一般的でした(さげよーねって)。しかし、先日の「オーケストラの世界」でも指摘があったように、たまにこのパートにチェロの1オクターブ下の音符が書いてあることがあるために、近年では「記譜通り」演奏するべきなのではないか、という主張が生まれています。そこで、使われるようになった楽器が、この「バス・ド・ヴィオロン」という、チェロをほんの少し大きくしたような楽器なのですね。
そんな「軽い」低音を持ったアンサンブルが演奏するブランデンブルク、例えば「3番」などでは、第3楽章(ちなみに、カデンツァだけの第2楽章がトラックの最初となっているライナーのトラック・リストは間違いです)をとてつもなく早いテンポで演奏しても、易々と弾きこなせてしまうのですから、見事、としか言いようがありません。「5番」でも、バス声部がこれほど明瞭に聞こえてくる演奏など、初めて聴いたような気がします。特筆すべきは、ここでのエヴァルト・デメイエルのチェンバロ・ソロ。力の抜けたさりげなさの中からにじみ出てくるファンタジーあふれる演奏が、とても素晴らしいものでした。
1993年盤では、「2番」のソロ・トランペットはホルンで演奏されていました。その頃は、ピストンこそないものの、音孔が開いていた「バロックトランペットもどき」しかなかったので、それならば、と、ホルンを使ったのですが、今回は、ホルン奏者のジャン・フランソワ・マドゥーフが、「妥協のないバロックトランペット」で鮮やかな至芸を聴かせてくれています。
同じように、ヴィオラ奏者のマルレーン・ティエルスと戸倉政伸が、「6番」ではヴィオラ・ダ・ガンバを持ちかえて弾いています。ただ、その器用さには感服するものの、ヴィオラとの絡みなどはことごとく「走って」しまって、アンサンブルの体をなしていません。ヴァイオリン・ソロのサラ・クイケンも、たとえば「4番」の終楽章などでは、余裕のないテクニックが露呈されてしまっています。そんなこともあってか、アルバム全体がなんとも窮屈な雰囲気に支配されているのが、ちょっと残念です。この曲では、もっと余裕があって楽しげな奏者間のやり取りが聴きたいものです。

SACD Artwork © Accent Tonproduktion
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by jurassic_oyaji | 2010-11-11 20:41 | オーケストラ | Comments(0)