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PIERNÉ, FRANCK, FAURÉ/Sonates romantiques
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Robert Langevin(Fl)
Jonathan Feldman(Pf)
AVIE/AV2213




ニューヨーク・フィルの首席フルート奏者、ロベール・ランジュヴァンのソロアルバムです。なんかやらしい名前ですね。和風だし。(それは「乱襦袢」)。
カナダで生まれたランジュヴァンは、モントリオールの音楽大学を卒業すると、地元モントリオール交響楽団の団員となります。同じ頃に入団、首席奏者を務めていたのはティモシー・ハッチンス、ランジュヴァンのポストは次席でした。しかし、彼はデュトワと行ったDECCAへのレコーディングでは、次席にもかかわらずソロを任されることがありました。1986年に録音されたビゼーの「アルルの女組曲」と「カルメン組曲」で、有名な「メヌエット」や「間奏曲」のソロを吹いているのは、ランジュヴァンのはずです。ハッチンスほどのしなやかさはありませんが、伸び伸びとした音が聴けますね。
その後、彼はピッツバーグ交響楽団の首席奏者に就任、さらに、2000年には、名門ニューヨーク・フィルの首席の座を射止め、今に至っています。ちなみに、彼の前任者のジーン・バックストレッサーも以前はモントリオール交響楽団の首席奏者でした。さらに、ハッチンスもニューヨーク・フィルからは何度も首席のオファーを受けているのですが、断り続けているのだそうです。モントリオールとニューヨークには、なにか因縁でもあるのでしょうか。
ここでランジュヴァンが演奏しているピエルネ、フランク、フォーレのソナタは、いずれも原曲はヴァイオリンのための作品でした。この時代のオリジナルのフルート・ソナタというものは、極めて数が限られていますから、なんとしてもこれらの素晴らしい作品を自分の楽器で演奏したいというフルーティストの願望は、良く理解できます。そもそもはジャック・ティボーのために作られたピエルネのソナタでも、オリジナルがフルート・ソナタだと思っている人もいることでしょうし、フランクに至っては、もはや完全にフルートのレパートリーと化しているのではないでしょうか。
しかし、フォーレあたりはまだまだフルートで演奏することには抵抗のある向きも多いのかもしれません。この演奏を聴いてみても、3楽章の早いパッセージは、ヴァイオリンの弓を浮かせて軽やかに演奏する、というイメージが、フルートではなかなか出すことが難しいのでは、と感じられなくはないでしょうか。でも、もしかしたら、それはランジュヴァンのちょっと重たすぎる演奏が、そのような思いを誘っているのかもしれません。例えばゴールウェイの1994年の録音(RCA)を聴いてみると、その部分は楽器の違いを超越した軽やかな愉悦感を味わえますから、やって出来ないことはないはずなのですよ。まあ、ゴールウェイと比べるのは酷なことなのかもしれませんが。
しかし、特に他の人と比較してみなくても、ランジュヴァンの演奏にはなにか素っ気ない感じがつきまとっているのは、すぐに分かります。フルートだからこそ、もっと感情を込めて歌って欲しいな、と思うところが、ことごとくあっさり通過されてしまうものですから、聴いていてあまり楽しくないのですよね。フランクなどでそれをやられると、これは悲惨です。正直、全4楽章を聴き終えて、残ったのは疲労感だけだったような気がします。
テクニックは完璧ですし、録音では良く分かりませんが、低音のヌケの良さをみると、おそらくかなり遠くまで響く音なのでしょう。それは、もちろんオーケストラでは最も要求される資質です。しかし、ソリストとしての魅力は、それほど期待しない方がよいのではないでしょうか。
もしかしたら、録音があまり距離感の感じられないデッドなものだったことが、そんな印象を持った要因なのかもしれません。これを聴いて生のフルートの音って、そんなに美しいものではないのだな、と思う人がいたとすれば、それは、この楽器にあまり愛情を持っていないように思えてしまう録音エンジニアの責任です。

CD Artwork © Robert Langevin
by jurassic_oyaji | 2010-12-01 20:53 | フルート | Comments(0)