おやぢの部屋2
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Nordic Sounds/Choral Music by S-D. Sandström
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Peter Dijkstra/
Swedish Radio Choir
CHANNEL/CCS SA 29910(hybrid SACD)




オランダの若き合唱指揮者、ピーター・ダイクストラは、今ではいったいいくつの合唱団の指揮者のポストにあるのでしょう。これは、彼が2003年から首席客演指揮者を務め、2007年には音楽監督に就任したスウェーデン放送合唱団との初めてのアルバムです。スウェーデン放送合唱団といえば、「世界一」の合唱指揮者であるエリック・エリクソンによって育てられた、まさに「世界一」の合唱団です。ということは、ダイクストラくんは、今や「世界一」の合唱指揮者になったのだ、ということになりますね。
アルバムタイトルの「ノルディック・サウンド」というのは、ライナーでダイクストラが述べていますが、エリクソンによって磨き抜かれたこの合唱団特有の響きのことなのだそうです。昔あったレーベルではありません(それは「テルデック」)。そんな、いかにも北欧らしい渋いサウンドにふさわしいのが、ここで歌われているスヴェン・ダヴィッド・サンドストレムの無伴奏合唱曲です。
現代スウェーデンを代表する作曲家であるサンドストレムは、以前「メサイア」でご紹介したことがありました。それは、ヘンデルの有名な作品を下敷きにして、彼自身の語法(あの場合はネオ・ロマンティックなテイストが濃かったような気がします)で新たに再構築する、というものでした。言ってみれば、「カバー」という概念ですね。ポップ・ミュージックでは、オリジナリティの枯渇から、近年はこの「カバー」が隆盛を極めていますが、それはついにクラシックのジャンルにも及んできたのでしょう。
ここでは、彼のその「カバー」の歩みのようなものを聴くことが出来ます。まず1986年に作られた、ヘンリー・パーセルの「Hear my prayer, O Lord」という未完のアンセムを、彼が「修復」したものです。「カバー」というよりは「補作」でしょうか。その仕上がりは、まるでベリオによって「完成」されたプッチーニの「トゥーランドット」のような様相を見せていました。それは、最初はパーセルのオリジナルが、少ない人数の非常に澄みきった響きで演奏されていたものが、次第に不協和な「汚れた」響きに支配され、混沌の世界が広がるというものです。しかし、最後は思いがけずハ長調の美しいハーモニーが鳴り渡って、驚かされます。実は、この曲は最近さる合唱団がコンクールの自由曲として演奏しているのを何度か聴いたことがありました。その時にはその作為的な「汚れ」が、なかなか伝わってこなかったことに、ちょっともどかしさを感じていたのですが、このアルバムの演奏では、作曲家の意図がきっちりくみ取れるものになっています。
同じ時期に作られた、こちらはブクステフーデが「元ネタ」の「Es ist genug」では、「美しさ」と「汚れ」の対比が、圧倒的な「力」となって迫ってきます。
その後、彼はもっぱらバッハの作品のカバーに熱中します。1994年の「ハイ・ミサ@ロ短調ミサ」を皮切りに、クリスマス・オラトリオや受難曲、マニフィカートからカンタータと、多くの「元ネタ」による作品を発表してきます。2003年に取りかかったのが、「モテット」ですが、そのうちの「Lobet den Herrn」と「Singet dem Herrn」をここで聴くことが出来ます。前者での、まるでヒップ・ホップの「サンプリング」のような、脈絡のないリズムの応酬など、さまざまな「技」が駆使されますが、バッハの精神だけは透けて見えるというあたりが、面白いところです。
それまでは主にオーケストラの作品が多かったサンドストレムが、合唱曲の作曲家としても一躍有名になることになった1981年の衝撃作「Agnus Dei」と、最新作、2009年の「A new song of love」を比べると、その間に横たわる落差の大きさに驚かされます。人間というものは、これほどまでに安易な方向に流れるものなのでしょうか。そのあたりを、合唱団のサウンドとスキルを総動員して見せつけてくれたダイクストラ、やはり彼はただ者ではありませんでした。

SACD Artwork © Channel Classics Records bv
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by jurassic_oyaji | 2010-12-09 20:33 | 合唱 | Comments(2)
Commented by 大苦酢寅 at 2010-12-12 23:56 x
今日は練習お疲れ様でした。
帰ってきてジェン津のCDを改めて聴いてしまいました。
ダイクストラさんは歌も上手い、合唱指導の才能もある、そこそこ顔も良い、羨ましいですね。
サンドストレム、是非聴かせて下さいね。
Commented by jurassic_oyaji at 2010-12-13 08:49
来週持っていきますね。
たがまやさんは、寅年生まれですか?私も寅年です。