おやぢの部屋2
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ようこそ! すばらしきオーケストラの世界へ
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近藤憲一著
ヤマハミュージックメディア刊
ISBN978-4-636-84683-6



オーケストラを聴く、ということは、まさにクラシック音楽鑑賞の王道です(王ケストラ・・・ちょっと苦しい)。おそらく、少年(少女)時代に初めてクラシックに親しむようになったきっかけは、ほとんどがオーケストラによってもたらされたのではないでしょうか。ある時その少年(少女)は、生のコンサートで実際のオーケストラの音を聴き、さらに強い衝撃を受けることになります。体中で感じられるその迫力に圧倒されると同時に、どんなに小さな音にも耳を傾けている自分に気づくことでしょう。さらに、その音色の多彩さ、それを生み出すそれぞれの楽器の特有の音にも、目を見張るに違いありません。かくして、オーケストラを聴くことは少年(少女)の最大の楽しみとなるのです。
そんな少年(少女)、あるいはもっと成長しておじさん(おばさん)になった人たちが、そんなオーケストラの魅力は一体どんな所から生まれているのか知りたいと思った時、とても役に立つのではないか、という本がこれです。いわばオーケストラの「攻略本」。これさえ読んでおけば、彼(彼女)は、さらに深くオーケストラと関わることが出来ることでしょう。
おそらく、「アラカン」を迎えた著者の近藤さん自身が、そのような小さなころからオーケストラに接する機会があったのでしょう。やがて、職業として音楽に関わるようになり、実際にオーケストラの内部の人たちとの交流も生まれることによって、そこで得られた知識をそんな「オーケストラ初心者」に伝えたいと思ったことが、この本を執筆する動機だったに違いありません。ここには、ご自身の体験とオーバーラップさせながら、おそらく彼自身が過去に抱いたであろうさまざまな疑問点を、すべてを知ることが出来るようになった現在の視点で暖かく解説している、という、なにか心和む風景が浮かんでいるように感じられます。
そのような意味では、この本では、オーケストラについての必要な知識は細大漏らさず述べられているように思われます。そもそも、オーケストラというのはどういうものなのか、という、まさに根源に迫る問題点から始まって、構成される楽器のこと、さらにはオーケストラに従事するさまざまな人間(楽器の演奏家だけではなく、それを支える「組織」としての人間も含めて)の「素」の姿まで、ここでは知ることが出来ます。まさに至れり尽くせり、これ以上何を求めることがありましょう。
しかし、いかにも活き活きと描かれているその姿が、なにか居心地が悪いのですよね。よくは分からないのですが、何かが足りません。それはおそらく、茂木大輔さんのさまざまなエッセイをすでに読んでしまっていたせいなのかもしれません。実際のオーケストラ・プレーヤーである茂木さんの筆からは確かに伝わってきたはずのリアリティが、この本からは全く感じられなかったのです。著者がいかにオーケストラに対する該博な知識を持っていたとしても、それだけでは決して語ることのできない「現場の匂い」のようなものが、ここでは完全に欠落しているのです。おそらくそれは、プロ・アマを問わず実際にオーケストラの中に身を置かない限り、身に付くことはないものなのでしょう。
著者も頑張ってはいるのでしょうが、たとえば「ブルックナーの交響曲は、どの曲もほぼ3管編成」(185ページ)とか、85ページでの弦楽器の弦が切れた時の処理(実際は、きちんと手順が決まっています)や、管楽器では「本番中の故障でもあわてないように、2本とも手元に置いて演奏する人もいる」などと書いてあるのを見ると、「やっぱりな」と思ってしまいます。A管とB♭管を持ちかえるクラリネットならいざ知らず、スペアの楽器を「手元に置いておく」木管楽器奏者など、まず普通のオーケストラにはいないはずですから。

Book Artwork © Yamaha Music Media Corporation
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by jurassic_oyaji | 2010-12-11 22:53 | 書籍 | Comments(0)