おやぢの部屋2
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PARADISI GLORIA 21
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Angelika Luz, Marlis Petersen(Sop)
Adrian Eröd(Bar)
Ulf Schirmer/
Chor des Bayerischen Rundfunks
Münchner Rundfunkorchester
BR/900302




「天国の栄誉 21」というこのタイトルは、21世紀に活躍している作曲家に宗教音楽を委嘱し、それを演奏するというウルフ・シルマーとミュンヘン放送管弦楽団のプロジェクトの名前なのだそうです。もちろん、彼らの母体であるバイエルン放送が録音し、逐一放送しているのでしょうね。
このプロジェクト、2008年と2009年には、「マニフィカートと聖母マリア」というテーマが設けられていました。そのテーマに沿って新たに作られた4つの作品が、このCDに収められています。もちろん、すべて世界初演の時のライブ録音ですから、当然世界初録音ともなるものばかりです。宗教曲ですから声楽が加わるものもありますが、合唱を担当しているのが、バイエルン放送合唱団です。お馴染み、ピーター・ダイクストラが音楽監督を務めている団体ですが、ここで合唱指揮者は別の人(2人の名前がクレジットされています)、多忙なダイクストラくんの職務は、ここでは「現場」よりも「管理部門」なのでしょうか。
最初の作品は、オリオール・クルイセント Oriol Cruixentという1976年生まれのスペインの作曲家の「深い淵 Abismes」。一応「オーケストラだけで演奏される曲」ということにはなっているのですが、後半に男声合唱でグレゴリアンのようなものが歌われているので「合唱団」はいなくても「合唱」は聞こえてきます。そんなに上手ではないので、オケの団員が歌っているのかも知れませんね。詩篇でお馴染みのこのタイトルですから、そのあたりの聖歌が引用されているのでしょう。しかし、この曲が始まった時には、よもやそんな展開などにはなるまいと思えるほどのハードなものだったので、ちょっと期待したのですが、それは「深い淵=混沌」といういとも安直な連想を具現化するためだけの、単なる「技法」の引用だったのでしょう。そう、この世代の作曲家にとっては、クセナキスさえ「引用」の対象となってしまっているのです。
次は、もう少し上の世代、1952年生まれのゲルト・キュール Gerd Kührというオーストリアの作曲家の「マニフィカート」です。感染性胃腸炎が流行っていますが、下痢とキュウリの間に因果関係はありません。こちらは、あのハンス・ヴェルナー・ヘンツェに師事したというぐらいですから、12音音楽あたりの伝統的な「現代音楽」をしっかり引き継いでいるという、ある意味貴重な作風を未だに貫いている人のようです。ここには合唱の他にソプラノとバリトンのソロが加わります。テキストも、本来の「マニフィカート」のラテン語の歌詞の前後に、ドイツ語の別の歌詞が加えられています。ソプラノのソロにわざわざ「高いソプラノ」と指定してある通り、ここでのソリスト、ルツは殆ど高い音だけを出させられています。ただ、実際は「A」とか「H」のソプラノにとってはそれほど高いとは思えない音を、いかにも苦しげに絞り出しているのは、そのようなキャラクターが求められていたせいなのでしょうか。そんな、久しぶりに聴く「ハード」な作品は、この中では最も聴き応えのあるものでした。
そのキュールに師事したのが、1973年にポーランドに生まれたヨアンナ・ウォズニーJoanna Woznyです。彼女もまた、「伝統」をしっかり引き継いだ作風を持っているように思えます。ここで演奏されている「群島Archipel」というオーケストラ曲は、しかし、そのような技法を駆使した結果、「ハード」ではなく「メディテーション」の世界にたどり着いたという、ユニークなものになりました。表面的ではない、真の「瞑想」がそこにはあります。
最後は、1969年生まれ、ウィーン在住のやはり女性作曲家ヨハンナ・ドデラーJohanna Dodererの「サルヴェ・レジーナ」、これはまっとうに普通の歌詞が歌われますが、曲想も他の3人とは全く異なる「まっとう」なものでした。代理店によるこのCDのインフォに「最も宗教曲として心にしみるものでしょう」とある通り、いかにも素人受けしそうな作品です。

CD Artwork © BRmedia Service GmbH.
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by jurassic_oyaji | 2010-12-17 20:40 | 現代音楽 | Comments(0)