おやぢの部屋2
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BACH/Sonatas
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Ronald Moelker(Rec)
福田理子(Cem)
ALIUD/ACD HA 007-2(hybrid SACD)




我が家では、買ってはみたものの一度も聴く機会がなくほったらかしにされているCDが山積みになっています。一応新譜紹介という看板を掲げていますのでつい新しいものを中心に聴いてレビューを書いていると、いつの間にかそれらのものは山の下に埋もれてしまい、化石になるまで発見されることはなくなってしまいます。そんなことになってしまっては、せっかくこの世に生まれてきたCDがあまりにも不憫、たまには手をさしのべてかわいがってやらなければ。
そんな慈悲の心で「再発見」されたのが、このSACDです。気が付けば日本でリリースされてから2年以上経っていましたが、そんなことは問題ではありません。しかし、ケースの中にブックレットとともにSACDのキャンペーンのためのチラシが入っていたのには、さすがに時代を感じてしまいました。どんだけ、輸入に手間取っていたのでしょう。
ここで、オランダの中堅ブロックフレーテ奏者ロナルド・メルカーと共演しているのは、桐朋学園を卒業後、王立ハーグ音楽院に留学、主にフォルテピアノを勉強した日本人ピアニスト、福田理子(りこ)さんです。相方の楽器はりこだ(リコーダー)。
もちろん、ここで使っている楽器は、18世紀のフレンチをコピーしたヒストリカル・チェンバロです。そう、SACDであることを売り物にしていたこのアルバムで、何よりも聴いてみたいと思ったのが、そのチェンバロの音なのでした。さまざまなSACDを聴いてきた中で、このフォーマットが最も得意としているのはガンガン鳴り響く大きな音ではなく、真の繊細さを要求される小さな音なのではないか、という気がしてきたものですから、チェンバロなどはうってつけなのではないか、と。CDなどでは、間違いなくヒストリカルを使っているはずなのに、まるでモダン・チェンバロのような鋭利な音が聞こえてきた、という体験は、何度も味わっていましたから。
そんな好奇心は、期待以上の成果をもたらしてくれたようです。スピーカーから聞こえてきたチェンバロの音は、何度も生で接したことのあるヒストリカル・チェンバロそのものの音だったのです。プレクトラムで弾かれた弦の響きは、なにか心の奥をくすぐるようなふわふわした浮遊感を持っています。それでいて音の芯はくっきりと聴き取れるという、そうですね、まるで細い竹串に刺したマシュマロのようなものでした(って、何という貧しい比喩なのでしょう!)。それは、このまま何時間でも聴いていたくなるような魅力をたたえたものだったのです。
演奏されているのは、バッハのフルート・ソナタが2曲と、ヴァイオリン・ソナタが2曲です。いずれもチェンバロ・パートは通奏低音ではなくオブリガート、つまり右手が独奏楽器との対話を産むというトリオ・ソナタのスタイルで作られているものです。もちろん、バッハのことですから、指定された以外の独奏楽器で演奏することには何の問題もありません。聴き慣れたロ短調(BWV1030)とイ長調(BWV1032)のフルート・ソナタからは、横笛で演奏される時とはまた違った、リコーダー特有の音程感によるはかなさが味わえます。その分、チェンバロとのバランスはまさに理想的、ある時にはリコーダーがチェンバロのオブリガートとして聞こえることもあり、そのスリリングな掛け合いの妙が満喫できます。ちなみに、イ長調の最初の楽章の欠損部分は、デュールによる新全集版を使っています。
ヴァイオリン・ソナタの場合は、音域の関係でしょうか、全音、あるいは半音高く移調されています。有名な「シチリアーノ」を持つハ短調(→ニ短調)BWV1017はもちろん、第2楽章のかわいらしさにバッハの無邪気な一面を見る思いのホ長調(→ヘ長調)BWV1016が、とても心に残ります。

SACD Artwork © Skarster Music Investment
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by jurassic_oyaji | 2010-12-21 23:48 | フルート | Comments(0)