おやぢの部屋2
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Works for Flute and Piano in 20th Century
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Mathieu Dufour(Fl)
Pascal Rogé(Pf)
CRYSTON/OVCC-00082




シカゴ交響楽団の首席フルート奏者マチュー・デフォーは、一時期は西海岸のロスアンジェルス・フィルの首席奏者も掛け持ちするという信じられないほどのハードな活躍ぶりを見せていた、まさに現在最も脂ののっている若手フルーティストです。いや、実際はロス・フィルに移籍するつもりでご家族ともどもシカゴから引っ越しまでしたのですが、結局奥さんが新しい土地に馴染めずに、元の鞘に収まった、ということのようですね。ロスの試用期間中は、シカゴにも籍が残っていたため、「かけもち」のように見えていたようです。実際に、このハードなポストを同時に2つも務めることなどは不可能なのでした(アメリカのオケには、首席奏者は一人しかいません)。
そんな売れっ子の割にはソロのレコーディングが殆どなかったのが、ちょっと寂しいところでしたが、なんと日本で録音のセッションを持ってくれました。しかも共演がパスカル・ロジェというのですから、これはとことん魅力的。
録音が行われたのは、今年の6月27日から29日まで、しかし、場所が福井県というのには、ちょっと驚いてしまいました。別に福井でコンサートがあったわけでもなく、レコーディングのためだけにわざわざあんな(どんな?)ところまで行ってきたなんて。しかし、会場となった「ハーモニーホールふくい」の大ホールというのは、世界各地に名ホールを造ってきたあの永田音響設計の手になるシューボックスタイプの、いかにも音の良さそうなところなので、録音が売り物のこのレーベルとしては、何か期するものがあったのでしょうね。
ただ、そんなレーベルだから当然SACDだと思っていたら、ただのCDだったのには本当にがっかりです。いくらいいホールを使ったり、「DSD Recording」などという表記があったとしても、SACDでなければなんの意味もありません。
アルバムには、日本語で「20世紀作品集」というサブタイトルが付いています。それは、プーランク、ヴィドール、サンカン、デュティユー、マルタン、そしてドビュッシーといった、いわばフルート界の「名曲集」のことだったのですね。「20世紀」というのは真の意味でのモダン・フルートのための作品が数多く作られた時代、そこで生まれたのが、これらの「名曲」、それは現代のフルーティストのレパートリーとしては欠かせないものとなっています。もちろん、それが誰に向けられた「名曲」なのかという点は、ベザリーの時に言及してあります。あまりしつこいと給料が減らされるので(「減給」ね)この件はそのぐらいで。
そんな、ある意味なじみのある、というより、隅々まで知っている曲なのに、ここでのデュフォーの演奏が、「普通の」リサイタルなどで聴かれるものとはかなり異なったテイストを持っていることには、誰しも驚かされるはずです。それは、どんなフルーティストでも必ず心がけるであろう、常に楽器を存分に響かせて聴衆に自分の音楽を訴えよう、という姿勢がとても希薄なのですよ。いや、確かに、彼の演奏には技巧をふんだんに披露するという場面がないわけではありません。それどころか、そんなヴィルトゥオージティを、彼は誰よりも圧倒的に見せつけています。しかし、彼にとってはそれはごく当たり前のこと、それよりも、まるで自分自身にだけ聴かせているような、とてつもなく内省的なピアニシモをことのほか大切にしているように思えてしょうがないのですね。もしかしたら、彼の演奏は、聴衆よりも作品、あるいは作曲者に向けられたものなのかも知れません。そして、不思議なことに、そんな演奏には、聴衆はとても心を打たれるのです。
最後に置かれたドビュッシーの「シランクス」は、作品自体に派手な技巧のひけらかしがない分、そんなピアニシモがひときわ際立ちます。これは、今までのこの曲に対する概念を覆すほどの、とてつもない演奏です。

CD Artwork © Octavia Records Inc.
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by jurassic_oyaji | 2010-12-28 22:05 | フルート | Comments(0)