おやぢの部屋2
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MOZART/Requiem
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Edith Mathis(Sop), Julia Hamari(Alt)
Wieslaw Ochman(Ten), Karl Ridderbusch(Bas)
Karl Böhm/
Konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor
Wiener Philharmoniker
DG/UCGG-9003(single layer SACD)




モーツァルトの「レクイエム」に関しては、なんせこのサイトですから新録音は殆どご紹介してきていました。もっとも、出来ることならジュスマイヤー版ではない補筆稿で演奏されているものを重点的に聴きたいな、という偏りがあるのは致し方ないことです。そんなわけで、「名盤」との誉れ高いカール・ベームの演奏などは、紹介はおろか、演奏自体すらも今まで一度も聴いたことがなかったというありさまでした。そんなことではいけないと、話題の「SHM仕様のシングル・レイヤーSACD」で発売になったのを機に、まっさらな心でベームの初体験です。愛してるよ!(それは「ジュテーム」)。
ベームのこの曲の録音は2種類ありますが、これは1956年のウィーン交響楽団とののモノラル盤(PHILIPS)ではなく、1971年にDGに録音されたステレオ盤の方です。オーケストラはウィーン・フィル、このコンビが確固とした名声を誇っていた頃のものですね。ソリストも一流ぞろいです。
しかし、いくら「名盤」とはいえ、アナログの磁気テープの経年変化は避けることはできません。それを忠実にトランスファーしたDSDマスターでは、曲が始まるや否や、ファゴットソロの部分での見事なドロップアウトまでも、生々しく聴かせてくれていました。さらに、タイム・コードで00:15付近では、明らかにノイズと思われる「シャッ」という音が聴こえます。こういう昔の録音の場合、たいてい「マスターテープに起因する雑音があります」みたいないいわけが記載されているものですが、このSHM-SACDにはなぜかこのお決まりのコメントがありません。そんな時に限ってこんなはっきりした「雑音」が見つかってしまうのですから、皮肉なものです。
しかし、さすがに限りなくアナログ録音に近い音をデジタルでよみがえらせたこのフォーマットですから、ウィーン・フィルの弦楽器の音はとても伸びやかでソフトな響きを味わうことが出来ます。録音会場であるウィーンのムジークフェラインザールの豊かなアコースティックスと相まって、まるで包み込まれるような暖かなサウンドが響き渡っています。合唱も、かなりの大人数ですのでちょっと歪みっぽいところもありますが、逆に「群」としての存在感が、強く伝わってくるものになっているのではないでしょうか。しかし、今回の国内盤で、初めてこの合唱団が「ウィーン国立歌劇場合唱連盟」と表記されているのを見て唖然としてしまいました。「Vereinigung」を最初に「連盟」と訳してしまった人がいたのですね。その間違いを誰も正そうとせず、ひたすら前の資料のコピペに徹した結果、まるでウィーン中のオペラハウスの合唱団員がすべて集まってしまったような「邦題」が定着してしまったのでしょう。
ベームの演奏は、さすが「巨匠」というべき、なんとも格調高いものでした。信じられないほどの遅いテンポ設定で繰り出される音楽は、「深い魂のほとばしり」、とか、「果てしない慟哭の表現」とか、「評論家」が好んで用いそうなフレーズによっていとも容易に「言葉」にできそうなものでした。しかし、そんな「精神性」にはいつだって胡散臭さを感じている人にとっては、これほどつまらない演奏もないのではないでしょうか。少なくとも、最近の演奏家たちによってもたらされた、新鮮なモーツァルト像を享受している人たちは、こんな演奏には全く価値を認めることはないはずです。先ほどの「合唱連盟」が、異様なテンションで常に上ずったピッチで叫び続けているものは、ワーグナーあたりでは確かな存在感を持てるのかもしれませんが、少なくともモーツァルトには、いや、本質的にはベートーヴェンでさえ、今となっては受け入れるにはかなりの忍耐を必要とするものとなっているのです。
そう、このベームの「レクイエム」を最後まで聴きとおすだけの「忍耐」は、まっとうな審美眼を持っている人にとっては拷問に近いものなのです。

SACD Artwork © Deutsche Grammophon GmbH
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by jurassic_oyaji | 2010-12-30 21:54 | 合唱 | Comments(2)
Commented by たがまや at 2010-12-31 09:40 x
私が持ってるモツレクのCDはこれの通常盤です。クラシック初心者の入り口にも達していない私の次元の低い感想ですが、私も最初のコーラスが入って来た瞬間にげげげっと思いました。アクの強い、ゴリゴリのアプローチが全くダメでした。以前に名盤の誉高いクリュイタンスのフォーレレクイエムよりも、あまり語られることのないクリヴィヌ?のCDの方がよっぽど気に入ってしまったこともあり、もう一枚、最近のモツレクを買おうかと思いました。
ド素人が失礼しました。
良いお年をお迎え下さい。
Commented by jurassic_oyaji at 2010-12-31 16:28
たがまやさん、今年1年お世話様でした。
こういう演奏を聴くと、「はだかの王様」を思い出してしまいます。みんなが「名演」と言っているのだから、変だと思ってもそれは自分の耳が悪いのだと納得してしまうんですね。クラシックの場合は、偉い評論家さんが推薦する物には盲目的に従うという悪習がはびこっていますから、困ったものです。
1月15日に仙台で初演される「レヴィン版」は、たぶん期待できるはずですよ。ヒロタケさんも歌ってますし。