おやぢの部屋2
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PÄRT/Cantique
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Kristjan Järvi
RIAS Kammerchor
Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin
SONY/88697753912(hybrid SACD)




ペルトのオーケストラと合唱のための作品などが収められているアルバムです。今時珍しいスタジオ録音、しかも、これも珍しいメジャー・レーベルによるSACDというのが、ありがたいところです。さらに、3曲のうちの2曲が「世界初録音」というのですから、その価値はハンパではありません。とは言っても、ペルトは好きではない人や、ヘッドフォンで圧縮音源だけを聴いていれば満足出来るような人にとっては、なんの価値もありませんが。先日のベームのモーツァルトのように、いくら素晴らしいと言われていても、人によっては全く価値が認められないものもあるというのが芸術作品の宿命なのですからね。
タイトルとは裏腹に、このアルバムのメインと言えるのが、世界初録音である「スターバト・マーテル」です。とは言っても、作品自体はアルバン・ベルク財団によって、その名が冠された作曲家の生誕100年と没後50年(彼はちょうど50歳ある晩、亡くなったんですね)の記念に、と委嘱され、1985年に初演されていますから、すでに有名なヒリアード・アンサンブルによるECM盤など、多くの録音が世に出回っています。ただし、このときには3人のソリスト(ソプラノ、カウンターテノール、テノール)と3本の弦楽器(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)という編成でした。しかし、ここで演奏されているのは、2008年に、このSACDでの指揮者のクリスティアン・ヤルヴィと、当時彼が首席指揮者を務めていたウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団からの「もっと深い響きに」という希望を受けて、5声の弦楽合奏と、3声の合唱のために作り直された改訂版なのです。
確かに、ここでトゥッティの弦楽器と、おそらく40人ほどの合唱団によって産み出される響きは、以前の小アンサンブルによるものとはまるで別物でした。これだったら、「初録音」と胸を張って主張出来るだけのものがあります。そして、これがSACDで聴ける点が、さらなる好感度を誘います。ペルトの音楽は、「癒し系」と呼ばれている割には、時として冷たく突き放されるような瞬間が感じられることがあります。それは、おそらく極度の集中力を込めて演奏された結果のある意味余裕のなさと、つい鋭さが強調されがちな録音のせいだったのでしょう(ECMの録音は、そんなのが多いような気がします)。しかし、ここで聴くことの出来る弦楽器の響きは、テンションは高いものの、その中にはしっかり暖かさの感じられるものだったのです。もちろん、リアス室内合唱団のピュアなサウンドからも、ソロからは決して得られない暖かさがもたらされています。さらに、そもそもこの編成を望んだヤルヴィ自身の目指したものが、やはり包容力のある音楽だったに違いありません。深いところでのペルトの音楽との共感、それが、ここではとても好ましい形で現れています。
ペルトと言えば、このような作風が広く知られていますが、彼の作曲家としての出発点は、もっと攻撃的な性格を持ったものなのだそうです。その頃の作品を実際に聴く機会はあまりありませんが、ここで2曲目に収録されている「交響曲第3番」は、彼がスタイルを変え始めたとされる頃の1971年の作品です。確かに、さまざまな要素が未整理のまま提示されている、という印象はありますが、現在のペルトを知っているものにとっては、なんともほほえましい気持ちになれる作品です。何よりも、金管楽器や打楽器によるスペクタクルなサウンドというのが、とても和みます。
最後の「Cantique des degrés」という曲が、アルバムタイトルの由来になっています。これは、詩篇121のテキストのフランス語訳をテキストにしています。1999年にモナコ王室からの委嘱で作られたものですが、録音されたのはこれが初めてです。レーニエ三世の即位50周年を祝うための曲だからでしょうか、今のペルトらしからぬちょっとキャッチーなテーマと、派手なサウンドが印象的です。

SACD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2011-01-02 20:05 | 現代音楽 | Comments(0)