おやぢの部屋2
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MAHLER/Symphonie No.2
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Ricarda Merbeth(Sop)
Bernarda Fink(MS)
Mariss Jansons/
Netherlands Radio Choir
Royal Concertgebouw Orchestra
RCO LIVE/RCO 10102(hybrid SACD, DVD)




ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の自主レーベル、今回は2枚組SACDに、なんとDVDまで付いてちょっと高めのCD1枚分という値段なのですから不当に安すぎ、警察に出頭した方がいいのでは(それは「自首」レーベル)。
これは、3日間にわたって行われた同じ曲目のコンサートを収録したものです。SACDは、それぞれのテイクを編集して傷のないものに仕上げたのでしょうが、DVDには初日の映像だけが使われています。ですから、SACDになった時に、この日以外のテイクが使われていれば、もしかしたらその違いに気づくことがあるのかもしれませんね。そんな楽しみも、このパッケージには込められているのでは。ですから、最初にDVDを見て(聴いて)、終楽章のソプラノ・ソロの音程がずいぶん低めだったので、これはSACDでは他の日のものに差し替えられているな、と思ったのですが、SACDでもやはり低い音程のままでした。もしかしたら、他のテイクがもっとひどくて、これが一番マシだったのかもしれませんね。
しかし、このDVDの演奏は、金管などはとてもライブとは思えないほどの完璧な仕上がりなのには、ちょっと驚いてしまいました。実は、ごく最近日本のオーケストラ、某NHK交響楽団が同じマーラーの2番を演奏したものを生収録した映像を見たのですが、それはもうひどいものでしたから。とにかく、金管の聴かせどころで、ことごとくヘクって(註:楽隊用語で、不本意な演奏をすること)いるのですよね。もしかしたら、音声だけは編集後なのかも。
ヤンソンスのこの曲に対するアプローチは、とてもスマートなものでした。決して過剰に煽りたてることはなく、マーラー指揮者にありがちな自分の感情にのめりこむ「臭さ」を感じさせることはありません。しかし、それでいて、情感豊かな表現が求められるところでは充分なカンタービレを要求しています。その結果、音楽自体は非常にバランスのとれた美しいものに仕上がっています。オーケストラは、ですからことさら個人芸を際立たせることはなく、ソロはあくまでアンサンブルの中での役割に徹しています。ポリヒムニアの録音チームの、そんな全体を包み込むような録音ポリシーも、それを助けているようです。
4楽章で登場するアルト・ソロのフィンクは、そんな流れに逆らわない、かなり軽めの声を聴かせてくれています。本来なら、もっと力の入った声が聴きたいところですが、こちらの方がヤンソンスの作り出した世界の中には、より溶け込んでいる心地よさが感じられます。ですから、先ほどのソプラノの不安定な音程が、いかにも唐突に聴こえてしまいます。
合唱も、見事に透明な音色を維持して、決して感情をむき出しにすることのない深い響きを醸し出しています。特に男声の充実ぶりは素晴らしいものがあります。合唱が出てきて数小節経ったあたりでは、マーラーが「実際に音が出なくても、出そうとしている気持ちが感じられれば吉(意訳)」という註釈を付けているベースのB♭という超低音を、彼らはいともあっさりと出しているのですからね。人数は100人程度でしょうか、マーラーとしては決して多いとは言えない人数なのですが、そこから繰り出されるピアニシモは、鳥肌が立つほどの美しさを持っています。
この人数だと、通常の合唱が入る客席のスペースには収まらず、通路を隔てた左右のブロックにも座っています。それが、最後のクライマックスの前、ソリストが歌っている間に、それまでずっと座って歌っていた合唱団員が全員立ちあがって、左右の客席にいた人たちも真ん中に集まってきます。もちろん、楽譜にはそんな指示はないのですが、これが、それこそホルンが立ちあがって演奏する(他の曲ですが)ほどのインパクトを与えてくれます。そんなことが味わえるのも、DVDによる映像が付いているおかげ、これは単なる「おまけ」にはとどまらない貴重なメッセージを届けてくれています。

SACD Artwork © Royal Concertgebouw Orchestra
by jurassic_oyaji | 2011-01-04 20:17 | オーケストラ | Comments(0)