おやぢの部屋2
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MATSUMURA/Symphonies
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神谷郁代(Pf)
湯浅卓雄/
RTÉ National Symphony Orchestra
NAXOS/8.570337J




ついこの間、朝日新聞の土曜日発行の別刷りに、クラウス・ハイマンの写真がでかでかと載っていたのに驚いたことがありました。その記事は、毎回さまざまな分野での成功者、おそらく、普通の人とはちょっと違ったユニークな方法でその成功を得た人を紹介するものだったのですが、そんな晴れがましいところにこのレーベルの創設者などというちょっと場違いな人物がいたのには、正直戸惑いを感じないわけにはいきませんでした。それまでにここで紹介された面々は、確かにひと味違った、ある意味尊敬に値する側面を備えた人ばかりだったのに、例えばこんないい加減な商売をしている会社のトップが出てくるなんて。
しかし、よく考えてみると、この人選にはそれなりの意味があることに気づきます。実はこのレーベルは、クラシックCDの売り上げが、今まで1位だったあのドイツ・グラモフォンを抜いて、全世界のトップに躍り出ているのです。確かに、最近のメジャー・レーベルのクラシックに対する扱いを目にしていればそれも納得できる事なのですが、それにしても、腐ってもあの名門のドイツ・グラモフォンが、こんな新興レーベルの軍門に下ってしまったとは。
そう、ハイマンは、安売り専門のマイナー・レーベルが、世界最大のクラシック・レーベルにまで成り上がったというサクセス・ストーリーの、まさに立役者だったのです(というか、ナクソス・ストーリー)。
それほどまでに躍進したというのは、やはり他のレーベルではまず手がけないようなレアな作曲家の作品を、場合によっては全集に近いものまでに掘り起こして世に紹介してきた、という制作ポリシーの賜物なのでしょう。ほんと、ここのカタログを見ていると、世の中にはいかに知られざる作曲家がいるのかが良く分かります。
そして、そのポリシーは、日本の作曲家にも及んでいたのですね。ご存じのように、日本独自の企画としてスタートした「日本作曲家選輯」というシリーズは、古今の日本人作曲家の一大アンソロジーとして、最終的には膨大なアイテムが提供される予定だったのでしょう。しかし、リリースが20枚を超えたころ、この企画を立ち上げた日本の代理店が、急に代理店契約を返上し、NAXOS本体の子会社がその業務を引き継ぐという事態が勃発しました。新しく代理店となった日本法人は、なぜかこの企画には冷たい態度を示し、それまでにすでに録音が終わっていたものも、リリースの目処も立たないままお蔵入りとなってしまったのです。
そんなアイテムの一つ、松村禎三のアルバムが、なんと3年ぶりに陽の目を見ることになりました。ジャケットのデザインは今までのものとはうってかわって垢抜けたものに変わっていますが、そのライナーノーツは、もはや、この企画の中心人物であった片山杜秀氏の筆になるものではありませんでした。華々しく「再開」を宣言した「日本作曲家選輯」ですが、この先さらに継続させていく予定があるのかどうか、知るすべはありません。
松村禎三といえば、独特の非西欧の趣味に基づく室内楽や合唱曲は聴いたことがありましたが、オーケストラのための作品に接するのはこれが初めてです。制作期間に30年以上の隔たりのある、ともにピアノがフィーチャーされた2つの交響曲を並べて聴くことによって、どの作曲家にでも感じられる作曲技法の変化を体験するのは、楽しみでもあり、辛いことでもあります。ライナーの中にある作曲者自身の言葉が、まるで社会の変化がその元凶であるかのような言い訳に聞こえるのは、「辛いこと」の筆頭でしょうか。最後のオーケストラ曲である「ゲッセマネの夜に」を聴くにつけ、その「辛さ」は募ります。
交響曲第1番の第2楽章で聴かれる、アイルランドのオーケストラの素朴なフルートの音色あたりが、わずかな「楽しみ」だったのかも知れません。

CD Artwork © Naxos Japan Inc. & Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2011-01-06 23:51 | 現代音楽 | Comments(0)