おやぢの部屋2
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BACH/Christmas Oratorio
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The King's Singers
Bill Dobbins/
WDR Big Band
SIGNUM/SIGCD215




ダーク・ダックスのトップテナー、高見沢宏さんがお亡くなりになりましたね。その前にはセカンドテナーの佐々木さんが歌を歌えるような体調ではなくなってしまったためにメンバーから離脱していましたが、その時には新たなメンバーを迎えることはせず、アレンジを変えて3人体制でやってきたようですね。しかし、すでに80歳を超えたバリトンの喜早さんとベースの遠山さんの二人だけではもはやコーラスとしての体をなしませんから、このまま、この日本のコーラスグループの草分け的存在だった「ダーク」も、解散を迎えてしまうのでしょうか。あるいは、別のジャンルですが、あの「クレージー・キャッツ」のように、現存するメンバーが2人になってしまっても名前だけは残しておくのでしょうか。
同じ時期に作られた「ボニー・ジャックス」や「デューク・エイセス」がそうであったように、いやしくもお客さんにきちんとした演奏を聴いてほしいと願っているプロの団体でしたら、メンバーに欠員があった場合には適宜新しいメンバーを迎えて活動を続けるというのが、まっとうな姿です。1968年にケンブリッジ大学のキングズ・カレッジ聖歌隊出身者によって結成されたキングズ・シンガーズも、もちろんそのようなスタンスで、しかしこちらの場合はむしろ早すぎるほどのメンバー・チェンジを繰り返して、今日まで40年以上のキャリアを築きあげてきました。常に「旬」のシンガーを擁することで、高いクオリティを維持しようという、それはそれで合理的な発想なのでしょう。
さまざまなレパートリーに挑戦してきた彼らが今回挑んだのは、ドイツのジャズ・バンド、WDRビッグ・バンドとのコラボレーションでした。信じられないことですが、多くのドイツの放送局は、クラシックのオーケストラや合唱団と同じように、専属のジャズ・バンドを持っています。ケルンにある西ドイツ放送局(WDR)のビッグ・バンドも、そんな、放送を通じてジャズの世界を広めようという使命を持った団体です。これは、かつて、このバンドの首席指揮者であり、現在も客演指揮者として関係の深い、アメリカのピアニスト/編曲者(イーストマン音楽院の教授)ビル・ドビンスが、彼らのためにバッハの「クリスマス・オラトリオ」をジャズにアレンジしたものを、ケルンのフィルハーモニーで演奏したコンサートのライブ録音です。打ち上げには松茸料理が出たのでしょうか(それは「土瓶蒸し」)。
全部で6つの部分から成り、普通に演奏すればCD3枚で3時間近くかかる「クリスマス・オラトリオ」ですが、ここではCD2枚に楽々収まる2時間ちょっとのものに刈り込まれています。実際は64あるナンバーは、36曲にまでカットされました。その割には演奏時間が長いのは、アドリブ・ソロがきっちり入っているためです。そう、この編曲は、「ジャズ風」にバッハを演奏するという「スウィングル・シンガーズ」のようなユルいアプローチではなく、きっちりジャズに仕上げようという、「ジャック・ルーシエ」タイプのものだったのです。レシタティーヴォは、ほぼ原曲通りの「尺」で演奏されていますが、ギターなどによる「コンティヌオ」と、斬新なコードで、しっかりジャズになっていますよ。ただ、面白いことに、今回のリード・セクションにはフルートとクラリネットだけが使われていて、サックスが全く入っていません。あの、無神経な音色とビブラートを持つ楽器がないことによって、なにかバッハをジャズにする際の最後の一線だけは守られたな、と思えるのはなぜでしょう。
もちろん、キングズ・シンガーズは、アドリブなどは一切行わず、与えられた譜面に忠実に演奏しています。そこから生まれる、バンドとは微妙に相容れないグルーヴを味わうことこそが、このコラボの醍醐味だったのかも知れません。

CD Artwork © Signum Records
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by jurassic_oyaji | 2011-01-14 21:02 | 合唱 | Comments(0)