おやぢの部屋2
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VIVALDI/Motets



Patrizia Ciofi(Sop)
Fabio Biondi/
Europa Galante
VIRGIN/545704 2



5月にフェニーチェ座と来日、ヴィオレッタを歌うことになっているパトリツィア・チオフィというソプラノ歌手の前評判は上々のようですね。ただ、私の場合、彼女の初体験がヤーコブスの「フィガロ」、このアルバムについては前任者がレビューを書いていますが、その中での感想には驚くほど共感できるものがありました。つまり、他の歌手はそれぞれの持ち味を出しているというのに、スザンナを歌ったチオフィだけが、この役に求められるキャラクターと全く違っていたため、何かなじめないものがあったのです。そんなとき、ふと店頭で目に入ったのがこのCDです。チオフィが歌うヴィヴァルディのモテット、ヴィヴァルディの宗教曲といえば、合唱で歌われる「グローリア」あたりしか聴いたことがありませんから、弦楽合奏を伴うソロ歌手のためのモテットなんて、それこそ初体験です。この編成のモテットは、何でも20曲ほど残されているそうですが、いったいどんなものなのでしょう。
「初体験」には、期待とともに、ある種の「痛み」も伴うものです。しかし、1曲目の「Laudate pueri Dominum(神のしもべをたたえよ)」が聞こえてきたときに、今回に限っては「痛み」を味わうことはあり得ないことが確信できました。そこにあったのは、いつもながらの元気いっぱいのエウローパ・ガランディの弾けっぷり、そしてヴィヴァルディの持つ華やかさをふんだんに盛り込んだ浮き立つようなイントロに乗って、チオフィの深い響きのコロラトゥーラが現れた瞬間、私たちが「ヴィヴァルディ」と言ってすぐ思い浮かべる、あの協奏曲の世界が広がっていたのですから。そう、様々な独奏楽器のための協奏曲を山ほど作った作曲家、というプロフィールが最も浸透しているこの作曲家のイメージを裏切らないこのテイスト、「ソロ・モテット」というのは、まさに「歌手のための協奏曲」だったのです。この曲の場合は、全部で10の部分から出来ているのですが、アレグロの部分でのコロラトゥーラは、とても人間が歌うことなど想定していないような(実際は、カストラートに歌ってもらうつもりで作ったのでしょうか)超絶技巧満載のフレーズのてんこ盛りです。そして、間に挟まるラルゴの部分は、とことん歌い込みさえすれば、涙すら誘いかねない甘ったるさです。この曲以外の3曲は、もっと「協奏曲」に近づきます。緩/急/緩という3楽章構成の典型的なイタリア風協奏曲に、「歌」であることを強調するために「レシタティーヴォ」を挿入するという工夫はありますが、最後のアレグロが「Alleluia」という歌詞で華々しく終わるのであれば、とことん小気味よいブリリアントな仕上がりになります。
チオフィは、たとえばエマ・カークビーのような端正な歌い方は取らず、その低めの張りのある声を武器に、縦横無尽に超絶技巧を楽しんでいるかのようです。そこからは、バックのオケの奔放さにも存分に張り合えるだけの迫力が生まれます。やはり、こういう人にスザンナは合わないでしょう。クリスマスにはぴったりでしょうけど(「チオフィこの夜」)。
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by jurassic_oyaji | 2005-04-23 11:38 | 歌曲 | Comments(0)