おやぢの部屋2
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An Evening with Leopold Stokowski
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Richard Egarr/
Brussels Philharmonic-The Orchestra of Flanders
GLOSSA/GCDSA 922209(hybrid SACD)




アンドルー・マンゼとの共演などで多くの録音を行ってきた鍵盤楽器奏者のリチャード・エガーですが、いつの間にか指揮者としての活動も忙しくなっていましたね。それも、音楽監督を務めるアカデミー・オブ・エインシェント・ミュージックのようなピリオド系のアンサンブルだけではなく、なんと、フルサイズのシンフォニー・オーケストラまで振っているのですから、素晴らしいですね。
今回のアルバムは、彼がベルギーのモダン・オケ、「フランドルのオーケストラ-ブリュッセル・フィル」と共演したものです。このオーケストラ、おそらく以前は「BRTフィル」というサンドウィッチのような名称(それは「BLT」)で、NAXOSなどに多くの録音を残していた団体と同じものなのでしょうが、何らかの変遷があって現在の名前になったようですね(本当のところは、実はよくわかりません)。
そんなオーケストラと作ったSACDは、タイトルにあるように、「レオポルド・ストコフスキとの夕べ」という、彼の今までのフィールドとは完璧にかけ離れた名前の音楽家がテーマになっているのですから、いったいなんだろうな、と思ってしまいませんか?ま、ストコフスキといえば、バッハの曲をオーケストラに編曲したりしていますから、関係なくもないのでしょうが、その仕事は昨今の「ピリオド」の成果とは全く無縁の、なんとも厚化粧の音楽を創り出したことなのですからね。ここで最初に聴くことが出来るのが、そんな代表曲、有名な「トッカータとフーガ」です。およそ、オリジナルのバッハの精神とはほど遠い、演奏効果だけを前面に押し出した編曲なのですが、実はエガーはそんなストコフスキの大ファンだ、というのですから、ちょっと意外ですね。
実は、聴いたことがある編曲はそれだけ、そのあとには、チェスティという、全く知らないイタリア・オペラの作曲家の作ったアリアを編曲したものが続きます。いとも甘~く歌い上げるというコンセプトなのでしょうが、そのためにやたらとポルタメントがかけられているのは、おそらく楽譜にそのような指定があるからなのでしょうね。
そして、今度はなんとエガー自身の編曲が登場です。どこまで才能にあふれているのでしょう。それがヘンデルの「水上の音楽」というのですから、いともマトモ、さすがに節度をわきまえた、しっかりしたアレンジです。しかし、ストコフスキがパレストリーナのモテットを編曲したもの(こんなものまで作っていたのですね)に続いて、もう1曲、エガーの編曲で、なんとオケゲムのモテットが、まるでさっきのパレストリーナのようなおどろおどろしいサウンドで聞こえてきた時、彼がいかにストコフスキに心酔していたかを知ることになるのです。それは、まるでストコフスキが乗り移ったようなアレンジでした。
最後に収録されているのが、チャイコフスキーの「スラブ行進曲」です。いかにストコフスキの十八番だったとはいえ、別に編曲が施されているわけでもないのに、なぜ?という疑問は、演奏を聴き終わる頃には氷解しているはずです。これは、ストコフスキが演奏したものの「完コピ」だったのですよ。手元に偶然、1972年に録音された、ストコフスキ自身の演奏がありました(シェエラザードのカップリング)ので聴き比べてみたら、同じようにパート間の掛け合いを煽ったり、クライマックスで大げさに見栄を切ったりと、表現のツボが全く同じなのですね。なんと、演奏時間までぴったり同じですし。
恐れ入りました。これは、エガーがストコフスキの音楽をどれだけ深いところで理解しているか、ということを、アルバム1枚を使い切って世の中に知らしめた、という代物だったのですね。
これで、いかにもSACDらしいナチュラルな音を追求した録音ではなく、それこそストコフスキ晩年の「フェイズ4」のようなケバい音だったら、彼の「なり切り」はさらに完璧なものになっていたことでしょう。

SACD Artwork © MusiContact GmbH
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by jurassic_oyaji | 2011-01-20 20:41 | オーケストラ | Comments(0)