おやぢの部屋2
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HOSOKAWA/Flute Music
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Kolbeinn Bjarnason(Fl)
Snorri Sigfus Birgisson/
Caput Ensemble
NAXOS/8.572479




例の「日本作曲家選輯」というシリーズの中の1枚です。先々週ご紹介した「3年ぶりにリリース」などと大げさに煽っていたアイテムとは対照的に、いともさりげなく通販の新譜にあったので、ちょっと不思議な気はしたのですが買ってみました。そうしたら、ブックレットがえらく貧弱で、英語のテキストしかありません。品番の最後に付く、日本制作の意味を持つ「J」の文字もありませんでしたし。どうやらこのシリーズ、すべてが日本で企画されたものというわけではないようですね。そういえば、武満徹の作品集の中にも、そんな感じのものがありましたね。
武満同様、世界的に評価されている作曲家だからこそ、細川俊夫の作品集も、そんなインターナショナルな扱いを受けられるのでしょう。ここでは、なんとアイスランドのフルーティストとアンサンブルによって、彼のフルートのための作品が満喫できます。フルートのビャルナソンという人は、1958年生まれの中堅、しかし、その経歴の中で「ニューヨークや東京で尺八を学ぶ」という部分に注目させられます。
ベルリンでユン・イサンに師事した細川俊夫の作風は、あくまで真摯に音に向き合うという、ちょっと近づきがたい厳しい面を持ったものです。それは、決して心地よいメロディやハーモニーを提供しようとはしない、ある意味意志の強さが感じられるものです。そんな音楽をフルートに託した作品、ここではフルート1本のものから、しだいに編成が大きくなっていくという構成をとって、さまざまな様相の体験を迫ります。
1曲目の「垂直の歌」と2曲目の「線」は、フルートソロで演奏されます。いずれも、ノーマルな奏法よりも特殊奏法の方が高い割合を示すという、いわば「アブノーマル」な響きに支配された作品です。しかし、そんな、たとえば息音だけを強調したり、同時に別の音程を出したりという奏法は、日本人にとってはそれほど違和感のあるものではありません。そう、それは、尺八などでは普通の表現として扱われているものなのですね。ですから、ここで演奏者の「尺八を学んだ」という経歴が役に立ってきます。おそらく、作曲者が思い描いたイメージとかなり近いところで、この演奏は成立していたのではないでしょうか。さらに、「線」というのは、日本の書道をイメージしたものなのだそうですが、そんな「トメ」や「ハネ」の感じも、より分かりやすい形で表現されているように感じられます。
次の「リート」は、ピアノとのデュオになります。アルバムの中では最も新しい2007年の作品ですが、ここでは、ピアノがもっぱら「アブノーマル」な役目を引き受けている中を、かなりリリカルなフルートが動き回る、といった趣でしょうか。
そして、さらに楽器が増えて、「断章II」という作品では、弦楽四重奏が相手です。ライナーの表記ではこの曲は普通のフルートを吹いているようになっていますが、掲載されている細川さん自身のコメント(英文)によれば、使用楽器はアルト・フルートとなっていますね。もちろん、聴こえてきたのもアルト・フルートの渋い音色でした。
そして、最後を締めくくるのが、「旅V」という、18人のアンサンブルをバックにした作品です。アンサンブルの中にもフルートが入っているため、同じ楽器同士の掛け合いのような場面も見られます。これも、ライナーの表記にはないのですが、ここでの目玉は普通のフルート、ピッコロ、そしてバス・フルートという3種の楽器を持ち替えて演奏していることです。特に、バス・フルートが登場する部分では、まさに「尺八」のようなハスキーな音色で迫ってきます。
おまけとして、「黒田節」がアルト・フルートで演奏されます。それは、なじみ深いメロディとは裏腹に、今までの曲想を裏切らない、厳しさと切なさが伴った編曲でした。

CD Artwork © Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2011-01-22 20:28 | 現代音楽 | Comments(0)