おやぢの部屋2
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SWAYNE/Choral Music
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Sophie Bevan(Sop), Kate Symonds-Joy(MS)
Ben Alden(Ten), Jonathan Sells(Bas)
Raphael Wallfisch(Vc)
Graham Ross/
The Dimitri Ensemble
NAXOS/8.572595




前作で素晴らしいマクミランを聴かせてくれたドミトリー・アンサンブルの、最新アルバムです。前作同様、プロデュースとレコーディングはあのジョン・ラッターが担当してるのらったー。前回は楽器がたくさん入っていたのであまり感じなかったのですが、今回の、ほとんどア・カペラの合唱という編成のものを聴いてみると、録音がものすごく良いことに気づきます。合唱の録音というのは本当に難しいものらしく、SACDなどで出ているものでも、満足できることはほとんどありません。常になにか歪みっぽい感じが付きまとっているのですよね。しかし、これは違います。いくら声部がかさなっても、音はあくまでクリア、どんなにフォルテシモで歌っても、ソリストがどんなに声を張り上げても、全く歪みが感じられないのですから、すごいものです。たとえ合唱の「音」を誰よりも知っているとしても、それだけではこれほどの録音は出来上がりません。ラッターという人、レコーディング・エンジニアとしても卓越したスキルを持っていたのですね。
ジャイルズ・スウェインというイギリスの作曲家は、1946年に生まれました。ケンブリッジ大学を卒業したのち、王立音楽院で学び、さらにはパリでオリヴィエ・メシアンにも1年ほど師事しています。その作風はかなりグローバル、自身も民族音楽の収集などのフィールド・ワークを行って、作品の中に反映させています。
最初に聴こえてくるのが、彼がセネガルで実際に録音した祈りの歌です。そして、そのような伝承曲に込められたエネルギー、具体的には特異なモードや複雑なポリリズムを合唱曲として昇華させたものが、それに続く「Magnificat I」です。聴き慣れたラテン語のテキストが、幾層にも重ねられたリズムの綾の中から浮き上がってくるのは、スリリングです。
続く「The silent land」という曲は、実質的には「レクイエム」です。その編成が、今度はあのトーマス・タリスのモテット「Spem in alium」を下敷きにした、40声部という巨大なものになっています。タリス同様、5声部のコーラスが8つ集まったという構成なのですが、タリスとは異なり、ここにはチェロの独奏が加わって、そのドラマティックな表現力で圧倒的に迫ります。20分以上かかる長い曲ですが、その様相は刻一刻変わり、飽きることはありません。オープニングあたりは、まるでペンデレツキの「ルカ受難曲」のような、激しいクラスターの応酬、この編成から産み出される多次元の独立した要素が、複雑に絡み合うさまは、まさにエキサイティング。そして、後半になってくると、チェロの息の長い旋律が心にしみてくるはずです。それは、あたかも師メシアンの「世の終わりのための四重奏曲」へのオマージュのように響きます。その頃には、合唱は美しい三和音で「Requiem・・・」と、いつ果てることもないフレーズを繰り返しているのです。
最後は演奏時間36分の大作「Stabat mater」です。これは非常に複雑、かつ重い作品となっています。元々はラテン語でキリストの遺体のそばに佇む聖母の哀しみを歌った聖歌なのですが、ここではラテン語だけではなくヘブライ語やアラブ語、そしてキリストが話した言葉とされるアラム語など、多くのテキストで歌われ、音楽もそれぞれの言語に由来するものになっています。そこには、単にキリスト教の聖歌と言うだけではない、現代に通用するメッセージが込められていることは明白です。ソリストが、そんな非西欧の秩序に基づく歌を朗々と歌う様はちょっと鬱陶しい気もしますが、最後のモテットで「Dona nobis pacem」という言葉がそれぞれの言葉で繰り返されるシーンは、確かに感動的です。2004年に作られたこの曲は、これが初録音となりますが、2011年にはライプツィヒで、新しくチェロが加わったバージョンが初演されるそうです。それは、さらに「感動的」な仕上がりになることでしょう。

CD Artwork © Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2011-02-01 22:17 | 合唱 | Comments(0)