おやぢの部屋2
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MOUSSORGSKY/Pictures at an Exhibition
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Valery Gergiev/
Wiener Philharmoniker
DECCA/UCGD-9013(single layer SACD)




昨年、日本のユニバーサルが、いったい何を思ったのか、一度は見限ったSACDを突然出したのには、驚かされました。しかも、専用プレーヤーでなければかからない単層のSACDですからね。宝塚ではありませんよ(それは「男装」)。ジャズやロックも含め、すでに80近くのアイテムがリリースされているのもうれしいことです。これが、一過性のものなのか、あるいは将来になにか期待を持っても構わないものなのかは、今の段階では分かりません。別にこんなマニアックなものではなくても、普通のハイブリッドで構わないのですから、ぜひSACDが日常的に出回るような社会になってほしいものです。
去年の年末には、こんな高価なものを買ってくれたお客さんに対するお礼の意味なのでしょうか、「4枚買ったら発売中のSACDの中からお好きなものを1枚差し上げます」みたいなキャンペーンを展開していましたね。それまでにちょうど4枚手元にあったので、早速応募して、これをもらうことにしていました。それからほぼ1ヶ月たって、やっと現物が届いたところです。
なぜ、これにしたかというと、まず、これはCDで持っていたから。せっかくもらうのなら、CDとの比較が出来るものの方がいいですからね。それと、今まで買ったのはすべてアナログ録音のものばかりでしたが、最初からデジタル録音のものも、きちんと聴いてみたい、という思いもあったからです。SACDの良さは、アナログ録音でこそ発揮されるということを身を持って味わっていたところなのですが、それがデジタル録音、もちろん、初期の16ビットのものではなく、これが録音された2000年当時のハイビット(おそらく)ではどれほどのものが達成できていたか、確かめてみたかったのですね。
それは、想像をはるかに超えるものでした。CDに続いてこのSACDを聴くと、まるで3Dのように音が立体的に聴こえてくるのですからね。もちろん、「立体的」というのは、かつてNHKAMしかなかった時代に、第1放送と第2放送をシンクロさせてラジオ2台で「ステレオ放送」を行っていた番組「立体音楽堂」の語感とは微妙に異なるものです。あちらは平面的な「立体」、そして、こちらは3次元の、本当の意味での「立体」ですね。
つまり、それぞれのパートが、ひときわ聴覚的なふくらみをもって聴こえてくる、という比喩なのですが、これはまさにアナログ録音からのSACDと全く同じ経験でした。たとえば、CDのレビューの際に指摘した「キエフの大門」の最後の部分での、唐突なバスドラムなどは、決して大音響の中に埋もれることなく、くっきりとした音像を形成してよりクリアな存在感で聴こえてきます。
さらに、今までCDを聴いてきて例外なく不満に思えていた、弱音器を付けたヴァイオリンによって演奏される時のテクスチャー(肌触り)が、このSACDでは見事に再現出来ているのですね。たとえば、「古城」の中間部や、カップリングの「はげ山の一夜」の最後の部分などで、それが体験できるはずです。おそらく、初期のデジタル録音では不可能だったものも、この頃にはきちんとアナログ並みに再現できるようになっていたのでしょうね。
そんな、繊細さとしなやかさを取り戻した音で聴き直してみると、ここでのゲルギエフとウィーン・フィルの演奏からは、ライブならではの生々しさを存分に味わえることになります。先ほどの「古城」などは、ファゴット奏者、サックス奏者、そして弦セクションは、それぞれに全くばらばらな方向を向いて演奏しているのが分かります。しかし、それがアンサンブルの乱れと感じられることはありません。こんな混沌とした「現場」を作り上げて、その上で不思議な高揚感を生み出すというあたりが、おそらくゲルギエフの放つオーラの正体だったのかな、というような思いに浸れるほどの、実は素晴らしい録音だったのですね。

SACD Artwork © Decca Music Group Limited
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by jurassic_oyaji | 2011-02-03 20:30 | オーケストラ | Comments(0)