おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
IDENSTAM/Jukkaslåtar
c0039487_1943429.jpg


Simon Marainen(yoik), Brita-Stina Sjaggo(Voc)
Sandra Marteleur(Vn), Thorbörn Jakobsson(Sax)
Janas Sjöblom(Perc), Gunnar Idenstam(Org)
BIS/SACD-1868(hybrid SACD)




フィンランドの作曲家マンティヤルヴィの合唱作品で、「Pseudo-Yoik」という曲があります。日本語では「ヨイクもどき」でしょうか。録音や、あるいは生の演奏でも聴いたことがありますが、複雑なリズムの中から、たくましいエネルギーが感じられるなかなか楽しい曲でした。そのタイトルにあるように、それは「ヨイク」を素材にした作品なのですが、「もどき」というのがちょっと微妙。いったい本物の「ヨイク」とはどんなものなのか、興味がわいてくるのは当然のことでしょう。いつかはちゃんとした「ヨイク」を、と思っていたら、こんなアルバムを見つけました。パーソネルの中に「ヨイク」とあったので、迷わずお取り寄せです。
あのマリー・クレール・アランにも師事したというスウェーデンのオルガニスト、グンナル・イデンスタムが作った「ユッカスヤルヴィの歌」という曲集、手にしたアルバムのこのジャケットには、わざとピントを甘くした写真が使われていました。なにか抽象的なイメージを表現しているのかな、と思ってしばらく眺めていると、なんだか「目」があるように思えてきました。そう、このつぶらな目の持ち主は、トナカイだったのですね。あの特徴的なツノも見えますね。こんなトナカイたちの故郷、スカンジナビア半島の北部、ラップランドに住むサーミ人の伝承歌が、この「ヨイク」です。今では少なくなってしまった「ヨイク」の歌い手(「ヨイカー」ですね)の一人が、ここに参加しているシモン・マライネンなのですね。2013年には来日するかも(「カモン・再来年」)。
その他のパーソネルは、もう一人のヴォーカルとヴァイオリン、サックス、打楽器、そして、作曲者のイデンスタム自身がオルガンと「録音素材」というクレジットで参加しています。いったい、どんなサウンドが繰り広げられるのでしょう。
最初に聴こえて来たのは、想像していた伝承曲のイメージとはまるで違った、いとも洗練された8ビートのポップス・チューンでした。基本的に、とても聴きやすい爽やかな曲調、その中に「ヨイク」のダミ声がフィーチャーされて、不思議なアクセントになっている、という感じです。
確かに、民族的な素材は使われているものの、このポップな仕上がりにはちょっと肩すかしを食らった感があったので、作曲者の経歴をもう一度確認してみると、イデンスタムという人はクラシックのオルガニストであると同時に、「フォーク・ミュージック」のアーティストでもあったのだそうですね。そして、この作品で目指したものは、民族音楽と「シンフォニック・ロック」の融合だというのです。ということは、まさにいにしえの「イエス」や「ELP」が拓いたジャンル、「プログレッシブ・ロック」を、ラップランドの土壌で産み出そうという試みだったのですね。思ってもみなかった展開ですが、これは現代ではある意味とても斬新な企てなのでは。なんだか、とってもいいものに出会えた、という気がします。
曲の中で描かれているのは、この地方の自然や、お祭りなどなのでしょう。軽快なダンスのバックで聞こえてくるのは、まるでストリート・オルガンのような鄙びたリード管、かと思うと、後半には春を迎える喜びが迫力たっぷりのフル・オルガンと、まさにプログレ、といわんばかりの豪快なドラムスの応酬で描かれます。
そんな中で、もう一人のやはりサーミ人である女性シンガーによって歌われる「こもりうた」は、サーミ語、スウェーデン語、フィンランド語という、この地方に住む民族のそれぞれの言語によるヴァージョンが用意されていて、その、とてもシンプルな、懐かしさを誘う曲調の中に確かなメッセージが込められています。
ここぞという時に聞こえてくるオルガンのペダルの重低音が、信じられないほどの音圧で迫ってきます。オーディオ的な興味も尽きない、とても楽しめるアルバムですよ。

SACD Artwork © BIS Records AB
[PR]
by jurassic_oyaji | 2011-02-05 19:45 | ポップス | Comments(0)