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朝川博・水島昭男/音楽の366日話題事典
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朝川博・水島昭男著
東京堂出版刊
ISBN978-4-490-10792-0



このような、1年間の全てにわたって、何月何日がどういう日に当たっているか、ということをジャンル別に集めた雑学集のような本はいろいろありますね。これは「音楽編」、ということで、音楽に関するネタが集まってます。だいたい、こういうものはいかにもノウハウ本といった安っぽさがつきまとうものですが、この本はまず装丁が立派、一読しただけで、そんなあまたの「365日」ものとは一線を画したていねいな作られ方が感じられます。おっと、これは「366日」でしたね。しっかりうるう年まで含められていたのでした。それだけでも、普通のものより「1日」お得です。
その、「1日」多い2月29日は、ロッシーニの誕生日でした。これは、わりと有名なことなのでそれほどのインパクトはないのですが、その次の3月1日が「マーチの日」だったというのは、初めて知りました。確かに、3月は「March」ですからね。さらに、そこで語られる、「マーチ」にちなんだ話題の中で、「軍艦マーチ」というのが扱われているのが、ちょっと目をひきます。それこそスーザあたりを出すのが王道なのでしょうが(スーザは別のところで登場していたざんす)、よりによってこんなひねった曲を持ってくるとは。なんか、このあたりにこの本をまとめた、ともに「団塊」世代のお二人のしたたかさのようなものを感じてしまいます。
あくまで「音楽」というジャンルでまとめてはありますが、それが「クラシック音楽」に限定されていない、という視野の広さも、好感の持てるところです。その話題は多岐にわたり、ビートルズやエルヴィスなどのポップスは言うに及ばず、日本の古典芸能(本当の意味での「邦楽」)までも扱われているという、フットワークの軽さです。そして、その中でひときわ目をひくのが、「唱歌」とか「童謡」の周辺の話題の豊富さです。もちろん、その中には「唱歌」を産んだ明治初期の教育制度についての言及も多く含まれます。もしかしたら、このあたりの、もはやかなり風化している日本の音楽教育の歴史をもう一度見直してもらいたいというような願望が、著者たちにこの本を作らせたのでは、とさえ思ってしまう程の、それは物量的な迫力を持つものでした。
例えば、「8月12日」などは、「『祝日大祭日歌詞並楽譜』公示」なのだそうです。雑学と言うにはあまりにマニアックなアイテムですが、そこで語られている「君が代」についての記述は、穏やかな中にも何か強い意志が感じられるものです。かと思うと、2月12日の、「たきび」という童謡を作った作詞家の巽聖歌(たつみせいか)の誕生日では、この曲に対する「軍部のヒステリックな」バッシングが語られます。別に、そこで触れられているわけではないのですが、これは今だったら「えせエコ運動家によるバッシング」と置き換えられるのでは、と勝手な想像をふくらますのも、一興です。「『学習指導要領』(試案)発表」(3月20日)と、「『教育基本法』施行」(3月31日)という、似通ったテーマを繰り返すというしつこさも、熟読すると著者の強い思いが伝わってきます。
まあ、そんな「お堅い」話題だけではなく、もっと気楽に味わえる雑学も満載ですよ。8月1日は中田喜直の誕生日なのだそうですが、それにちなんで彼が新聞に投稿した過激な批評によって巻き起こった論争のことが語られているのには、「やっぱり」と思ってしまいました。それと同じ時期に、彼は音楽雑誌でクセナキスのことをボロクソにこき下ろしていたのですね。当然クセナキス擁護派からの反論も同じ雑誌に掲載されたりして、なんとも低次元で不毛な論争に終始していたことを思い出したのです。
6月22日は、ピーター・ピアーズの誕生日。しかし、そこにブリテンとの関係を露骨に持ち出さないあたりは、なかなか慎み深い「大人」を感じさせられます。

Book Artwork © Tokyodo-Shuppan
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by jurassic_oyaji | 2011-02-14 20:53 | 書籍 | Comments(0)