おやぢの部屋2
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BACH/Sonatas, Trio Sonata
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Joshua Smith(Fl)
Jory Vinikour(Cem)
Ann Marie Morgan(Vc)
Allison Guest Edberg(Vn)
DELOS/DE 3408




クリーヴランド管弦楽団の首席フルート奏者、ジョシュア・スミスによるバッハのフルート・ソナタ、第2弾です。「第1弾」はこちらでしたね。その時はオブリガート・チェンバロとのソナタが集められていました。べつに苦い薬を飲むわけではありませんよ(それは「オブラート」)。今回は同じジョリー・ヴィニクールのチェンバロの他にアン・マリー・モーガンのチェロが加わって、通奏低音とのソナタが3曲、それに、さらにアリソン・ゲスト・エドバーグのヴァイオリンも入った「音楽の捧げもの」のトリオ・ソナタが演奏されています。
スミスの楽器は、前回同様ルーダル・カルテの木管なのでしょうね。ライナーの写真では、確かに木管に見える楽器の一部が写っていますし、何よりも音を聴けば、あの印象的な木管の響きですから、間違いないでしょう。ビブラート(オブラートじゃないですよ)も極力抑えられていますから、何も知らないで聴いたらトラヴェルソだと思ってしまうほどの、楽器と奏法でしたね。さらに、弦楽器も「バロック・ヴァイオリン」と「バロック・チェロ」というクレジットがありますから、たぶんピリオド楽器に近いものが使われているのでしょう。そんな楽器が集まったこのアルバムからはなんとも鄙びた風情が漂ってきています。ピッチはモダン・ピッチですが、やはりスミスの目指しているモダン・フルートを使った、バッハの時代の雰囲気の再生というコンセプトは、今回もしっかり貫かれているようでした。
演奏されている3曲のソナタは、それぞれに独特のキャラクターを持った作品です。中でも、ハ長調のソナタは、そもそもBWVではバッハ本人の作品ではないとされているものなのですが、ここでのスミスたちの演奏を聴くと、そんな、確かに「別な」キャラが、はっきりと伝わってきます。例えば、第1楽章の後半では、バスがドローンのように同じ音を伸ばしている間に、フルートはまるでカデンツァのような自由なパッセージを演奏しています。第2楽章で見られる軽やかな名人芸や、第3楽章の輝かしい装飾と相まって、そこからはほとんどイタリア風の明るいテイストさえ感じられはしないでしょうか。もちろん、それは大バッハの持つ資質とは微妙に異なっているものであることは、明らかです。
「真作」のホ短調とホ長調のソナタの間でも、このピリオド志向の強い楽器と演奏によると、モダン楽器ではあまり気がつくことのないキャラクターの違いがはっきり意識されることになります。特に、ホ長調の作品の中に見られるとびっきりの優雅さは、ひときわ印象的に伝わってきます。
そして、なんと言っても、聴き応えのあるのは全員が揃ったトリオ・ソナタでしょう。フリードリヒ大王が提供した、減7度の跳躍や半音進行などを含んだむちゃくちゃなテーマをもとに、バッハが職人的な技を込めて作り上げたこの傑作を、4人のメンバーはそれは楽しそうに演奏しているのですからね。そこには合奏の喜びがあふれているとともに、みんなが同じ方向を向いているというアンサンブルの基本が見事に反映されて、一つの「バンド」としてのグルーヴが感じられます。第2楽章のテーマの中に現れる付点音符のリズムを、後の細かい音符をほんのわずかだけ短くして不均等にするというのは、バロック音楽を演奏する時の一つのセオリーなのですが、そんなことが単に「当時の習慣」としてではなく、あたかも自発的にわき上がってきた「ノリ」であるかのように聴こえてくるのは、かなりスリリングな体験です。かと思うと、第3楽章でフルートとヴァイオリンがホモフォニックに進行するところでは、音色も音程も見事に溶け合っていて、まるでオルガンのように「一つの楽器」として聴こえるのですから、なにかほっとするような味わいです。
柔らかな音色に和まされるとともに、一本芯の通ったものが感じられる、油断の出来ないアルバムです。

CD Artwork © Delos Productions, Inc.
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by jurassic_oyaji | 2011-02-28 20:01 | フルート | Comments(0)