おやぢの部屋2
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WHITE NIGHT/Impressiouns of Norwegian Folk Music
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Berit Opheim Versto(Vo)
Gjermund Larsen(Fid)
Grete Pedersen/
Det Norske Solistkor
BIS/SACD-1871(hybrid SACD)




ジャケットにノルウェーを代表する画家、エドヴァルト・ムンクの「白夜」という作品をあしらった、そのタイトルも同じ「白夜」というこのアルバムは、まさにムンクの絵画の世界を彷彿とさせるような「渋さ」とともに、「鋭さ」を味わわせてくれるものでした。登場メンバーは3組、フォークシンガーのベリト・オフェイム・フェルスト、フィドルのイェルムン・ラーシェン、そしてグレーテ・ペデーシェンの指揮によるノルウェー・ソリスト合唱団です。あ、別にチケットは要りません(それは「ダフ屋」)。
ベリト・オフェイムが「フォークシンガー」というのは、ちょっと誤解を招く言い方ですが、例えば吉田拓郎やなぎらけんいちのような、いわゆる「フォーク・ソング」を歌っている歌手のことではなく、民謡などの伝承歌を、民族的な発声で歌っている歌手のことですね。ただ、彼女の場合は、クラシックの訓練もしっかり受けている、というのが、重要な点でしょう。
同じように、「フィドル」とクレジットされているラーシェンの場合も、音楽大学を「民族音楽」と「ヴァイオリン」の両方の課程で卒業した最初の人、というのが、注目されるところです。このアルバムでは、彼のオリジナル曲も多数聴くことが出来ます。
そして、メインは1950年にノルウェー・ソリスト協会によって創設された合唱団です。その時の指揮者がノルウェーの重鎮作曲家である、あのニシュテッドなのですから、最初からハイレベルなものを目指していたことがうかがえます。今までに200曲以上の新しい作品を初演していますが、その半数はノルウェーの作曲家のものだ、というのですから、この国の合唱音楽には多大な寄与を誇っていることになりますね。1990年からこの合唱団の芸術監督を務めているペデーシェンは、あのエリクソンの生徒、ノルウェーの伝統的な発声や、伝承音楽にも造詣の深い方です。
アルバムは、フィドルのソロから始まります。その音色は、あの多彩な「ヴァイオリン」とは一線を画した、まるで「バロック・ヴァイオリン」のような鄙びたものでした。しかも、ラーシェンの奏でるその楽器からは、なんともねっとりとした、まるで白い肌が吸い付いてくるようなセクシーな、まさに「肌触り」さえ感じられましたよ。ただ、これはSACDならではの感触、CDレイヤーで聴いてみると、なぜかそんな妖しい気分にはなれません。
そして、そこに、まるで中世のオルガヌムのようにそっと女声コーラスが忍び込んで来るあたりも、ゾクゾクする美しさ、さらに男声が入って盛り上がる頃には、あまりの様相の変化に、ただただ驚くばかりだったことに気づくはずです。ダンスや子守唄、さらには宗教的な題材の伝承曲まで、あくまで本来の民族的なテイストをきっちりと取り込んだ歌い方と編曲で、次から次へと楽しませてくれます。宗教曲の一つは、先ほどのニシュテッドの編曲ですから、なんと贅沢な。
その間に、フィドルのラーシェンだけではない、他の現代ノルウェーの作曲家の、やはり伝承的なイディオムを大切にしたオリジナル曲が挟まります。ビューエンという人の「Allsang」という新作は、2人の「フォークシンガー」がフィーチャーされているものですが、それは「生きている人と、亡くなった人」という2人、もう一人のシンガーは92歳のときに録音された音源で、渋く迫ります。途中では「Alt」という言葉を、パルスで微妙にハーモニーを変えながら連呼するという、まるでミニマル・ミュージックのような手法も登場です。
最後の「ヴァルソイフィヨルドの結婚行進曲」というかわいらしい曲では、シンガー、合唱、フィドルが絶妙の絡み合いを見せてくれます。その単純なメロディの繰り返しには、思わず涙がこぼれてくるほどの美しさがありました。この合唱団は、うますぎます。

SACD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2011-03-09 20:12 | 合唱 | Comments(1)
Commented at 2011-03-14 21:41 x
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