おやぢの部屋2
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MAHLER/Symphony No.5
大震災の爪跡はまだ残っていますが、少しでも前に進む努力だけはしていきたいと思っています。今では私のアイデンティティとなった、この「おやぢの部屋」を再開するのも、そんな姿勢の表れと思っていただければさいわいです。

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Valery Gergiev/
London Symphony Orchestra
LSO LIVE/LSO0664(hybrid SACD)




世界初の、SACDによるマーラーの交響曲全集の録音達成という栄冠こそはジンマンとチューリヒ・トーンハレ管のチーム(RCA/SONY)に持って行かれてしまいましたが、2007年から始まったこのゲルギエフとロンドン響とのツィクルスも、着実に「2番目」を目指してええ感じにリリースを重ねてきています。今回の「5番」に続いて、「9番」も近々発売の予定ですので、その完成も間近です。ちなみに、「世界初」というのは、あくまで最初からDSDなりPCMなりで録音されたものに限定させて頂いています。アナログ録音によるバーンスタインなどは、したがってSACDでも(まだ市場にあるのでしょうか)除外とさせて頂きます。
マーラー・イヤーとのかねあいもあって、最近では、SACDによるマーラーの交響曲の録音は、このほかにも多くのレーベルによって手がけられています。手元にあるだけでも、ノットとバンベルク響(TUDOR)、ティルソン・トーマスとサンフランシスコ響(SFS)、ヤンソンスとロイヤル・コンセルトヘボウ管(RCO)、ハイティンクとシカゴ響(SCO)、イヴァン・フィッシャーとブダペスト祝祭管(CHANNEL)、デ・フリエントとネーデルランド響(CHALLENGE)、インバルと東京都響(EXTON)など、多くのアーティストが、全集を目指して頑張っているようです(単発で終わる人もいるかも知れませんが)。
そんな、ある意味飽和状態にあるマーラー市場、それぞれにSACDならではの素晴らしい録音で購買意欲を煽り立てています。もとDECCAのサイモン・イードンがサウンド・エンジニアだったジンマン盤あたりが、録音では頭一つ抜きんでている、という感じはしましたが、なんせ「交響曲第1番『花の章』付き」などというタイトルがあったりしたものですから、すっかり醒めてしまいましたね。この人のえせ原典主義は健在でした。
ゲルギエフも、録音という点ではかなりのクオリティのものを出してきています。こちらはジンマン盤とは対照的に、あくまでホール・トーンを大切にした柔らかな音で迫っているようです。したがって、今回の「5番」でも第1楽章や第2楽章では、時折ゲルギエフらしいひらめきは感じられるものの、それがインパクトとして伝わってくるような場面はほとんどありませんでした。特に第2楽章などは、「嵐のように激しく」という曲頭の表記からなにかを期待していると、見事に肩透かしを食らってしまうほどの素っ気なさです。
しかし、第3楽章あたりからは、とても細やかな表情づけが徹底されているのが徐々に伝わってきて、全体がとても立体的に聴こえてきます。さまざまなエピソードが、それぞれの主張をもって的確に登場する、といった感じ、やはり、ゲルギエフはオペラの人なのでしょう。
そして、第4楽章では、なにかとても厳しい音楽に仕上がっているのに驚いてしまいます。ありがちな、甘ったるい情感で人を酔わせる、といったアプローチではなく、あくまで冷徹な目で作品の底にある魂をえぐりだすかのように、それは聴こえてきます。徹底的に弱音にこだわって、決して高揚感を与えることなく、この冷たいマーラーの世界を描き切った演奏には、打ちのめされてしまいます。
最後の楽章では、うってかわって明るくいきいきとした情感が現れます。しかし、その前の楽章を聴いてしまうと、それは、暗い葬送行進曲で始まったこの曲を、しっかり明るく終わらせるための方便のようにしか感じられなくなってしまいます。なにか無理をしているな、という思いですね。それだからこそ、曲全体が「明るく」ニ長調の大団円を迎えるかに見えるそのほんの8小節前に突如出現する不気味な変ホ-変ロという空虚5度が、その「明るさ」の正体を見事に暗示していることを、誰しもが受け取ることが出来るのではないでしょうか。
これこそが、ゲルギエフの底力、なんという、恐ろしい演奏なのでしょう。
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by jurassic_oyaji | 2011-03-21 20:16 | オーケストラ | Comments(2)
Commented by ななしのごんべい at 2011-03-23 00:58 x
いつも楽しく拝見しています。

大変な時ですが、いや、大変な時だからこそ、「おやぢの部屋」を再開されることに意義があると思います。
一日も早く通常の生活に戻れることをお祈りしています。
Commented by jurassic_oyaji at 2011-03-23 08:05
ななしのごんべいさま。
お励ましの言葉、ありがとうございます。