おやぢの部屋2
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KIND
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Nidaros String Quartet
Kjetil Almenning
Ensemble 96
2L/2L-076-SABD(hybrid SACD, BD)




録音が売り物の2Lレーベル、そのスペックは24bit/352.8kHzという、なんだかハンパですが、とてつもないサンプリング周波数を持ったものでした。もちろん、これをそのまま再生できる民生用のオーディオ・システムはありませんから、現状では上限の規格であるブルーレイ・ディスクの音声トラック(24bit/192kHz)にコンバートしたものと、DSDに変換したSACDの2枚組というパッケージです。
ここで演奏しているのは「アンサンブル96」という、以前2004年に録音されたニシュテッドのアルバムでお目にかかっていた合唱団ですが、あの時の録音スペックは24bit/48kHzという、DSDに相当するものにも及ばないものでした。それがいつの間にか、どんどんレゾリューションが上がっていて、ついにDSDを超えてしまっていたのですね。その時も今回も、録音された場所がウラニエンボリ教会という同じ場所なので聴き比べてみたら、その違いは歴然たるものでした。声の滑らかさと、立体感が全然違っているのですね。今回は、まさに眼前で演奏している合唱団の姿が等身大で見えるような、素晴らしい録音です。若々しいメンバーの澄んだア・カペラの声が、的確な残響をともなって、リスニングルームに広がります。
Kind」というタイトルは、ドイツ語の「子供」でしょう。このアルバムは、ノルウェーの伝承歌の中から「子供」にちなんだ子守唄を合唱に編曲したものの間に、現代の作曲家が作った「子供」という言葉が含まれるタイトルを持つ作品が演奏されているという、まるで「幕の内弁当」のような構成を持っています。素朴な子守唄は、お弁当の基本である「ごはん」、そして現代曲は「おかず」ですね。
それは、新鮮な食材に思いっきり手間をかけたとびきり上等の「おかず」、楽譜も簡単に入手でき、すでに日本の合唱団のレパートリーにもなっているフィンランドのマンティヤルヴィの「Die Stimme des Kindes(子供の声)」と、デンマークのネアゴーの「Wie ein Kind(子供のように)I-III」、そして、この録音のために委嘱されたノルウェーの若手作曲家(1979年生まれ)マルクス・パウスの「The Stolen Child(さらわれた子供)」の3品(3曲)です。
最年長(1932年生まれ)のネアゴーの作品は、言ってみれば「焼き魚」。「子守唄」、「春の歌」、「不幸な出来事を伴う葬送行進曲」という3つの部分から出来ていますが、それらを続けて演奏するのではなく、他の曲の間、正確にはトラック4、6、10にちりばめるという構成が憎いところです。両端の2曲ではアドルフ・ヴェルフリの前衛的な詩がテキストとなっていますが、それは殆ど擬態語のようなもの、音楽も合唱がきれいにハモっている中でソリストが突拍子もない叫び声を上げるという、ユニークさです。特に最後の曲でのテナーのソリストは、実に微妙なタイミングと表現力で、不気味さを的確に演出していました。
1963年生まれのマンティヤルヴィの作品は、そもそもは歌詞のない合唱曲だったものに、ニコラウス・レーナウの詩を当てはめたもので、とても柔らかい味わいを持つ佳曲です。「卵焼き」でしょうね。
パウスの新作には、弦楽四重奏が加わります。テキストはアイルランドのW.B.イェーツ、6/8に乗ったまるでグリーグのようなノルウェー風のテイスト満載のシンプルな曲調を、合唱と弦楽四重奏がそれぞれに「壊して」いくところがスリリングです。こういう「壊し」は、ニシュテッドなどの先達の伝統なのでしょうか。まさに地域限定の「ささかま」ですね。
そして、「ごはん」も有機農法で作られたササニシキ、フランク・ハヴロイという人が編曲した様々な地方の子守唄です。それぞれの持つ魅力的なメロディを大切にした美しいアレンジが、まるでかまどを使って薪で炊かれたようにふっくらと、この卓越した合唱によって味わうことが出来るかま。いただきま~す。

SACD Artwork © Lindberg Lyd AS
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by jurassic_oyaji | 2011-03-31 20:26 | 合唱 | Comments(0)