おやぢの部屋2
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MATHIAS/Orchestral and Vocal Music


Jeremy Huw Williams(Bar)
David Pyatt(Hr)
Anthony Hose/
Welsh Chamber Orchestra
METRONOME/MET CD 1066



ウィリアム・マティアスという、1934年に生まれて、1992年に亡くなったウェールズの作曲家のことをご存じでしょうか。「ザ・スパイダーズ」のメンバーではありません(それは「マチャアキ」)。もちろん、私は全く聞いたことはありませんでしたが、「ちょっと聴いて見ませんか?」と友人が貸してくれたこのCDを聴いて、すっかりこの人が好きになってしまいました。現在は「UK」の一部となっていますが、本来はいわゆる「イングランド」とは異なる民族であるケルト人の国であったウェールズ、ライナーでは英語とともにケルト語も併記されている通り、とことんウェールズにこだわったこのアルバムからは、何とも心やすらぐ彼の地の「匂い」のようなものが、ふんだんに漂ってきたのです(実際に行ったこともないのに、そんなものがなぜ分かるのか、不思議ですが)。
1986年にアンソニー・ホースによって創設されたウェールズ室内管弦楽団のデビューアルバムとなるこのCD(録音は2003年)、そこから聞こえてきた弦楽器の響きが、決して他の団体の録音からは聴くことが出来ないような心安らぐものであったことも、決定的な魅力になっています。この柔らかな、決して他人に怒鳴り散らすようには聞こえないこの穏やかさは、とびきりの包容力をもって迫ってきます。
最初の曲は、建物のオープニングセレモニーのために書かれた「イントラーダ」という短い作品です。オーボエ、ホルンがそれぞれ2本と弦楽合奏という軽い編成、その管楽器も、見事に弦楽器に溶け合っている様が素敵。曲調も、決して派手ではないのにしっとり祝福のメッセージが伝わるという渋いものです。次の「ウィリアム・ブレイクの詩による歌曲」では、バリトン独唱にチェレスタ、ハープ、ピアノと弦楽合奏という編成が、さらに透明感あふれるサウンドを提供してくれます。全部で12曲からなる曲集ですが、特に最後の2曲は、まるでサン・サーンスの「水族館」(「動物の謝肉祭」ですね)を思わせるような浮遊感に、惹かれるものがあります。これで、バリトン独唱のウィリアムズから重苦しさが抜けていれば、もっと爽やかな味わいが出ていたのでしょうが。もう1曲、ウェールズの伝承歌を編曲したものも収録されていますが、やはりもっと軽さが欲しいものです。
しかし、かつて、尾高忠明指揮のBBCウェールズ・ナショナル響のツアーでのソリストとして日本を訪れたこともある、ロンドン響の首席ホルン奏者パイアットのまろやかな音色は、このオーケストラとは見事に融合しています。穏健な中にも確かな歌心を伝えてくれている、古典的な4楽章形式のこのホルン協奏曲、最後の楽章の変拍子は、ちょっとしたアクセントでしょうか。時たま聞こえてくるコントラバスのピチカートの深みのあること。
そして最後に、弦楽器だけで演奏される「トレノス」という、内に秘めた情感を控えめに伝えるすべを見事に発揮した晩年の佳曲を聴けば、この作曲家の魅力にどっぷり浸かることが出来ることでしょう。もちろん、ここでの弦楽器の響きもまさに絶品です。
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by jurassic_oyaji | 2005-04-27 19:50 | 現代音楽 | Comments(0)