おやぢの部屋2
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MOZART/Overtures
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Andrea Marcon/
La Cetra Barockorchester Basel
DG/477 9445




モーツァルトのオペラの序曲を集めたアルバムです。彼の「オペラ」は、2006年のザルツブルク音楽祭での「全曲」演奏に倣えば、全部で22曲カウントできることになりますが、その中には未完のものも3曲(「ツァイーデ」、「カイロの鵞鳥」、「騙された花婿」)含まれていますし、「第一戒律の責務」はちょっとオペラというには苦しいものがありますから、正味は18曲というあたりが妥当なところでしょう。ここではCD1枚の容量をギリギリ使って、「シピオーネの夢」と「偽りの女庭師」を除く全16曲を収録しているのですから、これはもうほぼ全曲と言える健闘ぶりです。ありそうでなかったオペラ序曲の(ほぼ)全曲アルバムの誕生を喜んでみることにしましょうか。
ブックレットには見開きで録音セッションの写真が載っています。それを見ると、演奏している「ラ・チェトラ」のメンバーは若い人ばかりが集まっていることが分かります。見かけだけでは判断できませんが、おそらく40歳を超えるメンバーなどいないのではないでしょうか。頭が薄いのはチェンバロの人と、指揮者のマルコンぐらいのものですからね(それにしても、ジャケット写真のトリミングの絶妙なこと)。
それは、小さな体育館のようなところで録音している様子なのですが、マイクがとてもたくさん使われていることも分かります。クレジットを見ると、エンジニアはアンドレアス・ノイブロンナー、というか、録音からマスタリングまでをまるまる彼の「トリトヌス」が引き受けているのですね。話にはきいていましたが、実際にDGのようなメジャー・レーベルで彼らが行った仕事に出会ったのは、これが初めてのことです。もはや、メジャー自身が録音の現場を仕切ることはなく、「下請け」のプロダクションに任せるという時代になっていたことを、改めて痛感です。
その「トリトヌス」ならではのヌケのよい音は、確かに素晴らしいものでした。しかし、いままでSACDで接することが多かったため、やはりここではCDの限界を感じてしまいます。ヴァイオリンの高音に、今ひとつ肌触りの繊細さが不足しているのですね。国内盤ならともかく、いまさらこのレーベルがSACDに切り替えるとは思えないので、せっかくの録音が生かされないのがとても残念です。
もう一つ、写真からの情報では、このオーケストラが完全な対向配置をとっていることが分かります。個々のパートがクリアに定位しているこの録音では、左のファースト・ヴァイオリンと、右のセカンド・ヴァイオリンが、時には対話し合い、時には支え合うというお互いの役割を果たしている様子が、まさに手に取るように伝わってきます。もちろん、けんか腰になることはありません(それは「対抗配置」)。
管楽器も、オフになりがちなトラヴェルソがきちんと聴こえてくるために、理想的なバランスが味わえます。この楽器がある時とない時との音色の違いも堪能できますよ。
曲順がほぼ作曲年代順になっているために、ここではモーツァルト自身の11歳から35歳までの成長過程を、曲を通してつぶさに味わうことが出来ます。マルコンのていねいな指揮と、それに的確に反応している若いオーケストラによって、例えば15歳の時に作られた「救われたベトゥーリア」では、すでに短調の中に深い情感を込めていることが分かりますし、それが31歳の時の「ドン・ジョヴァンニ」になると、同じく短調で書かれた序奏の中では、全く次元の異なる高みに達していることを感じることができることでしょう。この曲は、その新全集によるコンサート用のエンディングまでを含めて、この中では最高の仕上がりを見せているのではないでしょうか。
ただ、「フィガロ」や「魔笛」といった超有名曲では、若さゆえのストレートさだけが強調されてしまい、モーツァルトが持つ真の愉悦感が少し聴こえにくかったのが、ちょっと残念です。

CD Artwork © Deutsche Grammophon GmbH
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by jurassic_oyaji | 2011-04-21 23:11 | オーケストラ | Comments(0)