おやぢの部屋2
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René Pape sings Wagner
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René Pape(Bas)
Plácido Domingo(Ten)
Daniel Barenboim/
Staatskapelle Berlin
DG/477 6617




1964年にドレスデンで生まれたルネ・パーペ、今や世界中のオペラハウスから引っ張りだこの、まさに脂の乗り切ったバス歌手です。いや、その特徴的な甘い(というか、キモい)マスクは、オペラハウスだけではなく映画の世界でも可能性を見いだされ、あのケネス・ブラナーによる映画版「魔笛」でも、なんとも慈愛あふれるザラストロを演じていましたね。英語まで喋って。
いや、彼は英語どころか実はロシア語も堪能なのですね。今シーズンのMETでムソルグスキーの「ボリス・ゴドゥノフ」がゲルギエフの指揮によって上演された時に、まわりはほとんどゲルギエフが連れてきたキーロフのロシア人歌手だった中で、ドイツ人であるパーぺは果敢にロシア語でタイトル・ロールを歌いきったのです。この模様は、「METライブ・ビューイング」として、日本の映画館でも体験することが出来たはずです。なんでも、かつて共産圏の「東ドイツ」だった頃には、ドレスデンではロシア語が必須教科として学校で教えられていたそうなのですね。確かに、言われてみれば当時はロシア、いや「ソ連」は、東ドイツには政治的には最も近い国でしたから、そんな「文化」も近かったのでしょう。
もちろん、彼の本領はなんと言ってもドイツ・オペラです。そんな中での代表格、ワーグナーの作品ばかりを集めたアルバムがリリースされました。意外なことに、彼にとっては、これは初めての「ワーグナー・アルバム」なのだそうです。確かに、バス・バリトンにとってのワーグナーは、ソプラノやテノールに比べたら地味な役柄が多くなっていますから、それだけでメリハリのあるアルバムを作るのは、結構大変、よほど実力のある歌手でない限り、なかなか成功は難しいのでしょうね。
パーぺほどの人でも、やはり全てを一人でというのは大変だったようです。そこで、グルネマンツとの絡みでパルジファル役としてフィーチャーされたのが、あのプラシド・ドミンゴ、バックを務めるバレンボイムの指揮するシュターツカペレ・ベルリンとともに、超豪華なゲストが集まって、なんとも贅沢なアルバムが出来上がりました。
まずは、「ワルキューレ」からの大詰め、「ヴォータンの別れ」を、ノーカットで聴いてみましょう。そこには、かつてのヴォータン役の歌手のような重苦しさは全くない、等身大の「父親」の姿がありました。もはや、威厳を振りかざす神々の長、といったイメージはこの役には当てはまらなくなっているのですね。そんな、マイホーム・パパぶりがパーぺにはよく似合います。しかし、バレンボイムの指揮はあくまで骨太、決してワーグナーならではの「重み」を忘れることはありません。
「マイスタージンガー」では、第2幕のハンス・ザックスのモノローグと、第3幕の幕切れの他に、なんと第2幕の最後の「夜警」の歌まで入っています。ステージでは味わえない「二役」の妙でしょうか。「ローエングリン」第1幕のハインリッヒ王の宣誓など、どうでも良い曲も入っていますし。
そして、ドミンゴとの共演の「パルジファル」第3幕は、なんとも渋く迫ります。いや、この作品自体が殆ど「歌」というものを考慮しないで作られているということの、それは再確認になるのでしょう。ここでのパーぺは、さっきのヴォータンとはまるで別人、それぞれのキャラクターを完璧に歌い分けていることが良く分かります。
そして、最後には、そんなある意味欲求不満を解消するかのようなメロディアスなナンバー、「タンホイザー」第3幕の「夕星の歌」です。洗剤を選べば悪臭を発しない、という歌ではありませんが(それは「部屋乾しの歌」)。ここに来て、力が抜けたのか、音程があやしくなっているのが惜しまれます。オーケストラの木管も、とんでもないピッチになっていますし。

CD Artwork © Deutsche Grammophon GmbH
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by jurassic_oyaji | 2011-04-27 20:06 | オペラ | Comments(0)