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GOUNOD/Requiem & Messe Chorale
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Charlotte Müller-Perrier(Sop), Valérie Bonnard(Alt)
Christophe Einhorn(Ten), Christian Immler(Bas)
Michel Corboz/
Ensemble Vocale et Instrumental de Lausanne
MIRARE/MIR 129




もうすっかり恒例となった、年に1度の贈り物、コルボがフランスのヴィルファヴァール農園で録音した珍しい宗教曲のシリーズです。昨年の8月に行われたセッションで取り上げられたのは、その前年に好評を博した(いや、ここでだけですが)ことを受けてか、グノーのレクイエムとミサ曲という、やはり珍しい曲でした。
レクイエムの方は、彼の最晩年、1891年に、その2年前に亡くなった孫のモーリスを悼んで作られました。そして、彼自身が亡くなる1893年まで、校訂を行っていたということです。さらに、フル・オーケストラのバージョンだけではなく、もっと簡単に演奏できる小編成のバージョンを作ることを、友人であったアンリ・ビュセールに託していました。ここで演奏されている、4人のソリスト、混声合唱、弦楽五重奏、ハープ、オルガンという編成のスコアは、ビュセールによって仕上げられたものです。
オルガンの半音進行のテーマで始まるこの曲は、なんとも神秘的な雰囲気と、それの対極にあるダイナミックなキャラクターを併せ持つものでした。フォーレの曲の「Libera me」を思わせるような低音のピチカートも印象的です。しかし、正直これを聴いて「死者を悼む」といった感じにはなれなかったのはなぜでしょう。前半の「Dies irae」が、あまりに冗長だったせいなのでしょうか。後半の「Benedictus」あたりからは、本当にリリカルな、まるでロイド・ウェッバーのようなフレーズが満載になってくるのですが、どうにも敬虔な気持ちにはなれません。「Agnus Dei」などは、本当に美しい音楽なのですがねえ。
一つには、この編成のアンサンブルが、なんとも落ち着きのないサウンドに聴こえてしまうからなのかも知れません。特に、小さなオルガンのチープな響きとむき出しの弦楽器の音が、全体を薄っぺらなものにしています。
それと、もっと大きな要因は、ここでの合唱のあまりのひどさです。最近北欧の素晴らしい合唱団を何度も体験してしまったせいでしょうか、このスイスの合唱団はなんともおおざっぱな演奏に終始しているようにしか感じられないのですね。
ところが、後半の「合唱ミサ」になったとたん、このいい加減な合唱が「レクイエム」とは打って変わって、伸び伸びとした歌い方になっていたのには驚いてしまいました。響きがまるで違うのですよ。もしかしたら、この「農場」にはたくさん録音用の会場がありますから、別の場所で録音していたのかも知れませんね。
このト長調のミサ曲は、「伴奏用のオルガンと、大オルガン」と、2台のオルガンが用いられるようなタイトルになっています。実は、それぞれの曲の最初に、合唱の入らないオルガンソロの部分が設けられているのですね。合唱が入ってくると、もう1台のオルガンで薄い伴奏に徹するといった感じでしょうか。しかし、オルガニストは1人しかいないようなので、ここではおそらくストップを変えて両方の役割を担わせているのでしょう。
まず、最初には堂々としたフル・オルガンで、グレゴリア聖歌をモチーフにしたイントロが奏されます。そのことでも分かるように、この作品ではいにしえのミサ曲の様式が用いられていて、とても19世紀後半に作られたとは思えないような落ち着いた雰囲気が漂っています。まるでルネサンスのような対位法の世界ですね。おそらく、そのあたりも合唱が本来の力を発揮できた要因なのでしょう。「Sanctus」あたりは、ホモフォニックに、まるでコラールのように迫ります。こんな透明感あふれる感触が、よもやこの合唱団から味わえるとは、なんとも嬉しい誤算でした。前回同様、グノーというのは本当にサプライズを秘めた作曲家だったことを、今回も思い知らされました。ぐうの音もでません。
来年は、どんな「贈り物」が届けられることでしょう。楽しみのような、怖いような。

CD Artwork © Mirare
by jurassic_oyaji | 2011-05-03 20:06 | 合唱 | Comments(0)