おやぢの部屋2
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MOZART/Concerto pour Flûte & Harpe, Concerto pour Clarinette
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Jean-Pierre Rampal(Fl)
Lily Laskine(Hp)
Jacques Lancelot(Cl)
Jean-François Paillard/
Orchestre de Chambre Jean-François Paillard
ESOTERIC/ESSW-90052(hybrid SACD)




レーベルの枠を超えて、素晴らしいSACDを提供し続けているエソテリックが、ついにERATOの音源に挑戦してくれました。1953年にミシェル・ガルサンをプロデューサーに迎えて創設され、LP時代にはマニアックなレパートリーと優秀な録音でひときわ輝いていたこの由緒あるレーベルが、マスターテープそのものの音で味わえることの意義は、計り知れないほど大きなものです。なんと言っても、レーベル自体は、後にRCAWARNERとたらいまわしにされた末に、現在は消滅してしまっているのですからね。
今回、世界で初めてSACD化されたERATOのアルバムは、ランパル、ラスキーヌ、ランスロという往年の名演奏家によるモーツァルトの協奏曲集です。録音されたのは1963年ですが、実は、これと全く同じ曲目で、同じ演奏家による録音というものが、1958年にもすでにステレオで行われていました。そして、なぜかそのLPのライナーノーツのコピーがここには同梱されています。確かに、この企画には今までもオリジナルのジャケットのコピーが添付されてはいましたが、こんな風に「旧録音」のものが付いてくるというのは初めてのことなのではないでしょうか。ちょっと意味が分かりません。しかも、これはカセットテープの品番が入っていたり、ロゴマークやオケの名前が新しかったりという、1970年代のリイシュー盤のジャケット、ますます意味不明です。
実は、たまたま「フルートとハープ」だけは別のカップリングのLPが手元にあったので聴いてみたのですが(演奏者が、「ジャン・マリー・ルクレール室内管弦楽団」と正しく表記されています)、それはそんなステレオの黎明期のものとは思えないほどの完成された録音でした。しかし、演奏家やエンジニアにたった5年後にもかかわらず再録音しようと思わせたのは、やはりその頃のまさに日進月歩の録音技術の進歩だったのでしょう。確かにこの「新録音」では、独奏楽器も、そしてオーケストラの中の楽器も、それぞれがくっきりと浮かび上がって聴こえてくるようになっています。ランパルのフルートも、すでに70歳を超えていたラスキーヌのハープも、旧録音とは全く違った生々しさで、迫ってきているのです。もっとも、演奏自体は、旧録音の若々しさの方がより好ましく感じられますが。ほんと、これを聴き比べると、たった5年でランパルの芸風はガラリと変わってしまっていることにも気づかされます。
ジャック・ランスロがソロを吹いたクラリネット協奏曲は、実は今回初めて聴きました。この演奏には、これまでに、例えば今回新たにライナーを寄稿している諸石幸生さんのように「紛れもないフランスの色、センス、エスプリ」が堪能できるといったような賛辞が与えられていたものです。しかし、聴こえてきたクラリネットの音には、ちょっと失望させられてしまいました。なんとも薄っぺらな音色なのですね。クラリネットって、もっと深い味わいのある楽器ではなかったでしょうか。しかも、この演奏にはいたるところでビブラートがかかっています。いや、最初はマスターテープの回転ムラなのでは、と思ってしまったぐらい、それは不愉快なビブラートでした。しかし、いやしくもあの杉本さんがマスタリングを行っているのですから、そんな音源を使うわけはありません。それは、よく聴いてみると、いわゆる「縮緬ビブラート」、略して「チリビブ」という、声楽やフルートの世界では忌み嫌われている奏法なのですね。女性にも嫌われますし(それは「チビデブ」)。そんなものを「フランスのエスプリ」などと言われても・・・。
おそらく、LP時代にはプレーヤーの回転ムラであまりよくわからなかった欠点が、SACDによって明らかになってしまった、という、悲しい現実なのかもしれません。「良すぎる音」というのも、ちょっと考えものです。

SACD Artwork © Esoteric Company
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by jurassic_oyaji | 2011-05-15 22:17 | フルート | Comments(0)