おやぢの部屋2
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La Spagna/A Tune through Three Centuries
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Gregorio Paniagua/
Atrivm Mvsicae de Madrid
BIS/SACD-1963(hybrid SACD)




「パニアグア」というのは、営みの衰えを隠すクスリ(それは「バイアグラ」)ではなく、ちょっと前の「古楽」シーンではかなり有名だった人の名前です。もちろん、彼は今まで誰も聴いたことのないような古い時代の曲の楽譜(というか、場合によってはタブラチュア)を探し出してきて、それを実際に「音」にして演奏するという、学術的な意味での「古楽」のリーダー的な存在ではありました。もっとも、それこそ「ギリシャ時代の音楽」などいったいどんなものだったのかなんてことは誰も知らないわけですから、もう「やったもん勝ち」とばかりに、ほとんど「でっち上げ」と変わらないことを堂々とやっていた、と言えなくもありませんが。ただ、その結果、聴いていて楽しいものが出来上がったのであれば、誰もそんなことをいちいち突っ込んだりはしないものです。物珍しさも手伝って、彼のアルバムはよく売れたはずです。
さらに、もう一つの面で、彼のアルバムは注目されました。それは、あまたのオーディオ・ファンをうならせるほど、録音が素晴らしかったのです。さる高名なオーディオ評論家(物故者)が絶賛したことによって、これらのアルバム(まだLPの時代です)はオーディオ・チェックになくてはならないアイテムとなったのです。有名なものは、HARMONIA MUNDIからりリースされた、先ほどの「ギリシャ音楽」などの一連のアルバムです。これらは最近になって、「XRCD」としてリイシューされましたから、その音のすごさを実際に体験された方もいらっしゃることでしょう。
実は、パニアグアはHMだけではなく、BISでもアルバムを作っていました。それが、今回新装なったこのSACDです。1980年に、BISの総裁フォン・バールが自らプロデュースと録音を手がけたもので、2枚組のLPでした。これも、オーディオ的には非常に高い評価を受けたものです。程なくしてCD化もされましたが、とても2枚分は収まらないので、8曲はカットされ、7140秒という当時のスタンダードな収録時間でのCD化でした。
そして、今回のSACD化です。ハイブリッド盤だけを考えると気づかないことですが、SACDレイヤーの収録時間は、CDレイヤーよりはるかに長くなっています。しかも、2チャンネルのステレオ信号だけでマルチチャンネルの信号が入っていなければ、それはさらに長くなります。ですから、今回は1枚のSACDLP2枚分、8722秒が、まるまる収まってしまったのです。さらに、CDレイヤーも、技術の進歩の賜物でしょうか、たった1曲カットしただけの、なんと8226秒という長時間収録が可能になっていたのですね。これって、もしかしたら世界記録?
このアルバムは、「ラ・スパーニャ」という古くから伝わる旋律を素材にした曲を、3世紀のスパンで探し出して並べたものです。有名無名の作曲家の作品、いや、中には「作曲者不詳」のものだってあります。レスピーギが作った「リュートのための古代舞曲とアリア」の中に出てくる「シチリアーナ」という有名な曲も、これと同じ流れをくむものなのでしょう。トラックにして48、それらが様々な「古楽器」によるアンサンブルによって演奏されています。もちろん、それはパニアグアならではの派手なレアリゼーションで、とてもいきいきしたものに仕上がっています。特に打楽器の、ほとんど切れかかったグルーヴが素晴らしいですね。一番気に入ったのは、最後の最後、CDレイヤーからはカットされた「Spaniol Kochesberger」という曲です。銅鑼やグロッケン、さらにはハーディー・ガーディーまで動員しての「中国風」スパニオル(意味不明)には、世間の憂さを忘れさせてくれるたくましさがありました。
録音は文句なし、アナログが最後に到達したものすごい音です。それは、到底CDのスペックには収まりきらないことは、同じトラックをSACDレイヤーとCDレイヤーとで比較してみれば、一目瞭然です。

SACD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2011-05-23 20:17 | 室内楽 | Comments(2)
Commented by shige at 2011-05-29 17:53 x
BISの初期の録音は民生用オープンリールデッキを使っていたりしてローコストに仕上げていますが、出てくる音はそんな事を感じさせない完成度なのが凄いです。
この録音にもREVOX A-77が使われていますが、そこらの最新デジタル録音が裸足で逃げ出す優秀録音ですね。
パニアグアのアナログ時代の名盤はSACDでこそ真価を発揮すると思うのですが、
仏harmonia mundiはSACDのリリースを縮小(終了?)してしまったようで残念です。
Commented by jurassic_oyaji at 2011-05-29 22:31
shigeさん、コメントありがとうございました。
次のLINNの時にも書きましたが、確かに最良のアナログ録音は、192/24のデジタルを凌駕する空気感を持っていましたね。