おやぢの部屋2
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Kuniko Plays Reich
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加藤訓子(Per)
LINN/CKD 385(hybrid SACD)



愛知県豊橋市生まれ、桐朋学園を卒業後ロッテルダム音楽院でも学び、現在は世界中で活躍されている打楽器奏者、加藤訓子さんが、「1人で」ライヒの作品に挑戦したアルバムです。彼女とライヒとのつながりは、10年ほど前、ベルギーでICTUSというアンサンブルに参加していた頃からのものだそうで、今回のアルバムもライヒ自身からの多くのサジェスチョンに助けられて完成したということです。
ブックレットでは、マリンバを演奏する彼女のタンクトップ姿を見ることが出来ますが、マレットを振り上げたその腕は筋肉隆々、なんともマッチョな印象を与えられるものでした。ライヒが彼女に初めて会った時の印象が「パワフル!」だったそうですが、確かに頷けます。
最初の曲は、1987年にパット・メセニーによって初演された、「エレクトリック・カウンターポイント」です。1982年の「ヴァーモント・カウンターポイント」(これも、今回のアルバムに収録されています)に始まった、特定の楽器を想定しての「カウンターポイント(対位法)」シリーズの第3作目で、本来はエレクトリック・ギターのために作られたものです。これを加藤さんは、スティールパンとビブラフォンとマリンバで演奏しています。「スティールパン」というのは大泥棒ではなく(それは「怪盗ルパン」)、「スティール・ドラム」とも呼ばれるトリニダード・トバゴ出身の民族楽器のことです。そもそもは、要らなくなったドラム缶を切ったものに凹凸をつけ、叩く場所によって異なる音程を出すようにしたプリミティブな楽器でしたが、現在では最初から大きな鍋(パン)のような形に成形された、様々の大きさのものが作られていて、民族音楽に限らず、このような「現代音楽」のシーンでも使われるようになっています。
3つの部分から成るこの曲では、最初の部分でこのスティールパンがソリスティックに扱われています。ラテン楽器特有のおおらかな明るさが、果たしてライヒのストイックな音楽の中で浮いてはこないのかという危惧は、実際に演奏を聴くと杞憂に終わりました。そんなキャラクターが、逆に、ともすれば無表情になりがちなライヒの作品に、「表情」を与えているのですね。したがって、第2部ではビブラフォン、第3部ではマリンバと「普通の」鍵盤打楽器がイニシアティブをとるようになると、なんだか物足りない気持ちになってしまうかも知れません。
次の曲は、「シックス・マリンバ・カウンターポイント」。これも、元々は「シックス・ピアノ」というタイトルの6台のピアノのための1973年の作品を、1986年に6台のマリンバで演奏するように改訂した「シックス・マリンバ」を、今回のレコーディングのためにソロ・マリンバと、残りのパートのマリンバが録音されているテープ(実際は、デジタル・メディアでしょうが)で演奏するために、加藤さん自身が編曲したバージョンです。ライヒ自身が、このバージョンに対して「カウンターポイント」シリーズへの仲間として命名してくれたそうです。オリジナルには見られない非常に豊かな「表情」が加わっているのは、全て1人で演奏しているからでしょうか。
そして、最後は1982年に作られた元祖「カウンターポイント」、フルート、ピッコロ、アルトフルートのための「ヴァーモント・カウンターポイント」を、ビブラフォンで演奏したバージョンです。元々の3つの楽器は、同じフルート属でも全くキャラクターが異なっています。そのあたりをビブラフォンに置き換えた時の配慮が、結果的にやはり豊かな表情を産んでいるのが聴きものでしょう。
192kHz/24bitというハイレゾで録音されていますが、この前のパニアグアのアナログほどのすごさが感じられないのは、スタジオでの多重録音のせいなのでしょうか。人工的なリバーブでは得られない自然な空気感があったなら、より暖かい肌触りを感じられたことでしょう。

SACD Artwork © Linn Records
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by jurassic_oyaji | 2011-05-25 20:03 | 現代音楽 | Comments(0)