おやぢの部屋2
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VILLA-LOBOS/Choral Works
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Marcus Creed/
SWR Vokalensemble Stuttgart
HÄNSSLER/CD 93.268




ブラジルの作曲家、エイトール・ヴィラ・ロボスは、もはやひところほどのマイナーな存在ではなくなっていますが、彼の合唱曲のCDなどはほとんど目にすることはありません。だいぶ前にHYPERIONからオーケストラ付きの宗教曲集(「サン・セバスティアンのミサ」など/CDA66638)が出ていましたが、今回のような無伴奏合唱曲を集めたアルバムを聴くのは初めてのことです。この中にも「初録音」というものがいくつかありますから、このジャンルはやはりかなり珍しいものなのでしょうね。
彼の作品は、伝統的な「西洋音楽」とは無縁の、得も言われぬテイストをもったものです。そんな、「非西欧」の浮遊感は、最初に収録されている聖歌「Cor dulce, cor amabile」でいきなり味わうことが出来ます。いかにもルネサンス風のストイックな曲のように見えていて、その実なんとカラフルな和声によって彩られていることでしょう。しかも最後の「amen」は、付加6の和音(ド・ミ・ソ・ラ)という、ジャズやポップスで多用される和音で終止しているのですからね。
彼の最も有名な作品群である「ブラジル風バッハ」にしても、正直「どの辺がバッハなの?」と言いたくなるような、なんとも不思議な感触に包まれたものでした。頭にお皿はありませんが(それは「カッパ」)。そのシリーズの最後の作品、「ブラジル風バッハ第9番」というのがここには収録されていました。しかし、この曲はオリジナルは確かに無伴奏混声合唱曲なのですが、弦楽合奏で演奏される機会の方がはるかに多くなっています。ですから、実際にこのバージョンで聴くのは初めてのことでした。「プレリュードとフーガ」という、それこそバッハのオルガン曲のようなスタイルを持っていますが、もちろん聴こえてきたのはうす暗い教会の中で響き渡る厳格な音楽ではなく、燦々と降り注ぐ太陽光のもとの、まさにラテン・フレーバー満載の楽しげなものでした。とりわけ「フーガ」のテーマなどは、まるでダンスのようなキャッチーなメロディを持っていますから、それが重なり合ったからといって決して堅苦しい「対位法」が現れることもありません。しかも、それが「声」によって歌われるのですから、楽しさはひとしおです。
逆に、本家バッハをカバーしているという、これが初録音となる珍しい作品も聴くことができますよ。それは「平均律(いや、正確には『ウェル・テンペラメント』なのでしょうが)」第1集の8番、変ホ短調(嬰ニ短調)の「プレリュードとフーガ」です。クラヴィーア曲を合唱に置き換えるというアイディアですが、この編曲はなんのことはない、あの「スウィングル・シンガーズ」の「ジャズ・セバスティアン・バッハ」そのものではありませんか。バッハの曲をスキャットで歌うという試みは、1962年のウォード・スウィングルのアレンジが最初のものではなかったのですね。
男声合唱がたくさん入っているのも、うれしいことです。それらは、この編成の合唱の、新たな可能性を示唆しているもののようにも感じられます。「José」にはいかにもラテン音楽らしい軽やかさがありますし、「Préces sem palavras」には深い祈り、そして「Bazzum」には悲しみが込められています。しかも、この曲の場合、その悲惨な内容の歌詞をあからさまに表に出すことなく、いともサラリとその精神だけを伝えるという高度な技法が光ります。
歌っているシュトゥットガルト・ヴォーカルアンサンブルは、完璧なハーモニー感覚でそのあたりの作曲家の意図を過不足なく伝えることには成功しています。しかし、もう少し突っ込んだ表現と、ていねいな音の処理があったら、さらに深いものが味わえたような気がします。そう、ヴィラ・ロボスの音楽は、一見楽しそうでいて、実は奥の深いものであることが、逆にこういう演奏からは教えられてしまうことがあるのですよ。

CD Artwork © SWR Media Services GmbH
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by jurassic_oyaji | 2011-06-02 19:38 | 合唱 | Comments(2)
Commented by 二群バリトン at 2011-06-06 18:32 x
ニ群落ちのソッチーホワイトレスです。昨日はお疲れ様でした!
いつまでたってもわかちあいながらの音が取れません。すいません。他も微妙ですが…
このCD、今度聴かせてください。
恥ずかしながらまだ聴いたことがない作曲家です。
Commented by jurassic_oyaji at 2011-06-06 19:51
お疲れ様です。
ただの属七なんですけどね。なにげに減五度が取れません。
余談ですが、ピアノを持ち上げないで運ぶ方法を考えてみました。コンパネをもう1枚買ってきて、その上を転がしていけばいいはずです。再来週やってみましょう。