おやぢの部屋2
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BEETHOVEN/Symphonie Nr.6
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Rafael Kubelik/
Orchestre de Paris
DG/UCGG-9014(single layer SACD)




最新の「レコード芸術」に、かつてドイツ・グラモフォンの社員だった日本人の方が書かれた記事が載っていました。それは、まさに「当事者」によって最近のメジャー・レーベルの凋落ぶりを生々しく伝えるものでした。社員の数は何分の一かに減ってしまっていますし、何よりも、録音の現場ではとりあえずプロデューサーは立てるものの、実際の仕事は全て下請けのスタッフが行っているというのですからね。ようかんじゃないですよ(それは「お茶請け」)。つまり、かつては「社員」としてそのレーベル独自の音を作り上げていた「トーン・マイスター」や「バランス・エンジニア」と呼ばれていたレコーディング・エンジニアは、もう一人もいなくなってしまったというのですね。それは最近のCDのクレジットからうかがえたことではありましたが、そんな「現実」を突きつけられるのは、なんとも寂しい思いです。
一連の「シングル・レイヤーSACD」が好評なのは、そんな、今ではなくなってしまったレーベルとしての音がまだしっかり存在していた頃の「記録」として受け止められているからなのかも知れません。なにしろ、1970年台のDGといったら、ベートーヴェンの9つの交響曲を、同じ指揮者にそれぞれ別のオーケストラを指揮させて録音するなどという、今ではとても考えられないような贅沢なプロジェクトを敢行していたのですからね。オーケストラは、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルを筆頭に最高ランクのものばかり、もちろん、演奏会のライブ録音などという「安上がり」なことはせず、全てきちんとセッションを設けて録音されています。そんなお金と、そして、「やる気」があったんですね、その頃は。
そんな、クーベリックが世界を股にかけて録音しまくったベートーヴェンの全集は、このジャケットにあるように、今のようなPHOTOSHOPで文字をエンボスさせたものではなく、実際に立体的に作られた模型に光を当てて撮影したと思われる、文字通り「アナログ」な手作り感覚満載のレタリングに飾られたボックスLPとして発売されました。それぞれに異なった音色を持つオーケストラが、異なった会場で録音していますから、それを味わうことはこの上なく贅沢なものに思えました。居ながらにして、世界中のコンサートホールの音が体験できるのですからね(中には、ホールではなく教会などもありましたが)。
中でもお気に入りは、この、パリ管による「田園」でした。この盤だけは、繰り返し何度も聴いて、その柔らかな弦楽器と、色彩的な管楽器の響きを満喫していたような気がします。しかし、これがCDとなって再発された時には、ジャケットは真っ黒な背景に指揮者の写真だけというなんの変哲もないものに変わっていました。そして、その音も、なんとも薄っぺらなものになってしまっていたのですから、その時の失望感は大きなものがありました。
それが、オリジナル・ジャケットで蘇ったのに、まず感激です。そして、もちろんその音も、LPで聴いていた時の質感がそのまま再現されたものでしたから、もう何も言うことはありません。もちろん、LPの欠点であるサーフェス・ノイズやスクラッチ・ノイズ、さらに内周歪みで不快感を味わうことなく、まさにマスターテープそのものの音が聴けるのですからね。
そんな環境で改めてクーベリックとパリ管の演奏を体験してみると、彼らはピアニシモにとてつもない神経を注いで演奏していることが良く分かります。第1楽章の16小節目から始まる「ソラ・シ♭・シ↑・ド」という音型を10回繰り返す間にピアノからフォルテまでクレッシェンドした後にピアニシモまでディミヌエンドするという箇所での、その最後のピアニシモの絶妙なこと。この肌触りは、いい加減なCDでは再現できませんし、LPではサーフェス・ノイズにかき消されてしまうことでしょう。

SACD Artwork © Deutsche Grammophon GmbH
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by jurassic_oyaji | 2011-06-04 19:44 | オーケストラ | Comments(0)