おやぢの部屋2
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ROSSINI/Arias
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Julia Lezhneva(Sop)
Marc Minkowski/
Sinfonia Varsovia
NAÏVE/V 5221




ユリア・レージネヴァという、ロシア出身のソプラノのデビュー・ソロアルバムです。一瞬「デビュー?!こんなおばさんが!」と思ってしまうぐらい、見方によってはとんでもない高齢者にも思えてしまうようなジャケットの写真ですね。でも、本当は彼女は1989年の生まれ。ですから、この録音が行われた2010年の1月には、おそらくまだ20歳になったばかりだったのでしょう。まぎれもなく「デビュー」にふさわしい年齢ですね。もっとも、彼女が「プロ」としてデビューしたのは16歳の時にモーツァルトの「レクイエム」のソロを歌ったコンサートだといいますから、それでも遅すぎたのかもしれません。
ただ、リーダー・アルバムこそ今回が初めてですが、すでにこのレーベルでは2枚のアルバムに参加していました。そのうちの1枚が、今回の指揮者ミンコフスキが振った「ロ短調ミサ」だったのです。ここでは、ソリストがそのまま合唱のパートも歌うというプランだったので、アンサンブルとしての合唱の役目がメインでしたが、「Gloria」の中の「Laudamus te」ではソロを担当していました。今回改めて聴き直してみると、この時のヴァイオリン・ソロのとことん弾けたオブリガートに見事に乗って、小気味よく装飾音をコロコロ転がしていましたね。
そんな人が、ロッシーニに合わないはずがありません。バッハの時にはあまり分かりませんでしたが、今回のアルバムを聴くと彼女の声はかなり低め、「メゾ」というよりは「アルト」に近い質のようです。そんな声でロッシーニのコロラトゥーラ(「アジリタ」というべきなのでしょうか)を軽々とさばく人、と言えば、バルトリとかカサロヴァが有名でしたが、その業界にこんな若い人が「参入」です。
レージネヴァの場合、そのアジリタはとても自然なものに感じられました。他の二人はいかにも「すごいなぁ」という、まるでフィギュア・スケートの3回転とか4回転といった超絶技巧を味わっている気にさせられるものが、彼女の場合は回転数などは関係なく、「回っている」ということ自体に美しさがある、といった感じでしょうか。
それだけではなく、彼女は伸ばした声自体にとてつもない力があります。この前のエルトマンとはまさに正反対、ただのロングトーンを聴いただけで、そこにはまぎれもない「主張」を感じられるのですね。そういえば、彼女、なんだかアメリカ先住民のリーダーみたいな雰囲気がありませんか(それは「酋長」)?いや、その落ち着いた声はとても貫禄のあるものです。
これだけのものを持っていれば、もう怖いものなしです。しかし、彼女はさらに、ハッとさせられるような細やかな表情を見せたりできるのですね。そんな、彼女のすべての魅力を味わえるのが「チェネレントーラ」からの有名なレシタティーヴォとアリア「Della fortuna istabile...Nacqui all'affanno」です。
かと思うと、「ギョーム・テル」の中の「Ils s'éloignent enfin」や「コリントの包囲」の「L'ora fatal s'apressa」といったしっとりと歌い上げるスローバラードも心にしみる、というのですから、もう脱帽です。「L'ora fatal ...」のエンディングのピアニシモなど、ゾクゾクしてしまいますよ。ここでは、バックのオケも実に見事なサポートを展開しています。おそらく、このアルバムを作るにあたっては、ミンコフスキのバックアップが大きく働いていたのでしょう。そんな、温かい思いやりのようなものも加わって、極上のCDが出来上がりました。オーケストラだけで演奏される「チェネレントーラ」の序曲なども、軽やかな仕上がりは絶品です。
何曲かの中で加わっているワルシャワの少人数の合唱団が、全く合唱の体をなしていないお粗末な出来であるのと、時たま彼女のピッチが上ずって聴こえてくることなどは、ほんの些細な傷に過ぎません。

CD Artwork c Naïve
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by jurassic_oyaji | 2011-06-14 22:58 | オペラ | Comments(0)