おやぢの部屋2
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Strid
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Håkon Daniel Nystedt/
Oslo Kammerkor
2L/2L-073-SACD(hybrid SACD)




この前ご紹介した「Kind」同様、意味深なタイトルが付けられた無伴奏合唱のアルバムです。いずれも2010年の1月に録音されたものなのですが、今回はさらにハイレゾで迫ります。水着グラビアじゃないですよ(それはハイレグ)。こちらは「32bit」ですって。「24bit」でもDSDの3倍のデータ量だったものが、こちらでは4倍なのだそうです。それでもまだ「アナログ」には及ばないというのですから、普通のCDで聴く「デジタル」なんてお話にならないことになりますね。
それにしても、この2Lというのは、今までに買った多くのアルバムの中には全く「ハズレ」がなかったという、恐ろしいレーベルです。事実上、制作の全てを1人の人間が行っているという、文字通りのマイナー・レーベルですが、だからこそ音にもとことんこだわれますし、企画も好き勝手なことが出来るのでしょう。それにひとたびハマってしまえば、その魅力に惹かれてつぎつぎと新しいアルバムを買い続けることになるのです。今回も、その透き通るような音を聴いただけですでに満足してしまえるほどでした。
タイトルに使われている「Strid」というノルウェー語の単語は、英語では「Struggle」に相当するのだそうですが、国内代理店のインフォのように「戦い」と訳すよりは「対決」といった方がこの内容にはマッチしているのではないでしょうか。なにが「対決」しているのかというと、一義的にはノルウェーの伝承聖歌と、クラシックの作曲家による「聖歌」ということになるのでしょう。ここでは、全く別の文化圏から生まれたこの二つのものを、同時に演奏するというとんでもないことを行っています。言ってみれば、作品同士の「対決」ですね。それだけにはとどまりません。ここにはソリストとして、いわゆる「フォーク・シンガー」、つまり、古くから伝わる伝承歌を専門に歌う人たちが参加しています。その人たちの歌と、クラシックの合唱団という、演奏家同士の「対決」も加わります。さらに、その合唱団も、自らの中でアカデミックな西洋音楽のスキルを発揮させると同時に、伝承歌にも対応できるような民族的な発声やハーモニー感に対するアプローチも見せるという「対決」が迫られているのです。
こんなに複雑に入り組んだ「対決」の諸相、これらを昇華させてさらに高い次元を目指そうと企てたのは、おそらくこのオスロ室内合唱団の音楽監督であるホーカン・ダニエル・ニューステットだったのでしょう。このラストネームを見てピンと来た人もいるでしょうが、彼はノルウェーの合唱界の重鎮である、あのクヌット・ニューステット(今までの「ニシュテッド」という表記を改めました)のお孫さんなのですね。1980年生まれですので、やっと30歳になったばかりですが、彼の指揮と、そして作曲の才能は、もしかしたらお祖父さんを超えるものがあるかも知れませんね。というか、お祖父さん譲りのチャレンジ精神が、ここで見事に開花した、という気もするのですが。
そんなわけで、編成的にとてもバラエティに富んだプログラミングになっていますが、やはりすごいのは「クラシック」の聖歌と伝承歌とのマッシュアップでしょう。そういうものが4曲あって、それぞれラフマニノフとチャイコフスキーの「クリソストム」の聖歌、グリーグの作品39-5の「若き花嫁の棺のそばで」という歌曲の合唱版、そしてブルックナーのモテット「Locus iste」が、様々の形で伝承歌とからみます。全く同時に、異なる歌が歌われたり、お互いの断片が時たま顔を出したりと、その「対決」の様相は一つとして同じものはなく、決して退屈させられることはありません。
素で出てくる「Locus iste」を聴くだけでも、この合唱団の力がハンパでないことは分かります。その上に「民族的」な発声も自在に操れるのですからね。さらに、例えば3曲目や最後の12曲目でのニューステッド自身の編曲の素晴らしいこと。全てに於いて「見事!」としか言いようがありません。

SACD Artwork © Lindberg Lyd AS
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by jurassic_oyaji | 2011-06-18 21:02 | 合唱 | Comments(0)