おやぢの部屋2
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REICH/The Dessert Music, Three Movements
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Kristjan Järvi/
Chorus Sine Nomine
Tonkünstler-Orchster Niederösterreich
CHANDOS/CHSA 5091(hybrid SACD)




「ミニマル」の立役者として、常に最前線で活動しているスティーヴ・ライヒの作品は、その名の通り「小さな」編成のものばかりだと思いがちですが、しっかりフル・オーケストラのための曲も作っています。それらは、1979年から1987年の間に集中して作られました。その中には、大人数の合唱が加わったいわば「カンタータ」とも言うべき作品もあるのですから、ちょっと意外な気がしませんか?どんなジャンルの作曲家でも、ある程度世の中に認められると、「委嘱」という形でオーケストラのための曲を作る機会も出てくるのですよね。そんな時のために、作曲家たるものはしっかりと「管弦楽法」の勉強もしておかなければいけないのですよ。
しかし、ライヒのことですから、そんなオーソドックスなオーケストレーションにこだわるようなことはしてはいません。1984年に作られた「砂漠の音楽」では、やはり際立って聞こえてくるのは、他の作品同様、ピアノや打楽器による規則的なパルスなのですからね。さらに、合唱や木管楽器には「amplified」という、普通のクラシックの楽譜にはあり得ないような指示がつけられています。つまり、マイクで拾った音をアンプで増幅してバランスをとるという、「PA」の思想ですね。もっとも、こういうことをやったのは別にライヒが初めてではなく、その20年ほど前にすでにルチアーノ・ベリオが「シンフォニア」の中でスウィングル・シンガーズに同じことをやらせていましたがね。
「砂漠の音楽」はケルンの放送局とアメリカの音楽団体との共同委嘱でしたから、まず1984年3月に、ペーテル・エトヴェシュの指揮によるケルン放送交響楽団によって世界初演されたあと(エトヴェシュは1985年7月のイギリス初演の録音も、BBCから出していました)、同じ年の10月にニューヨークでアメリカ初演が行われました。この時の指揮はマイケル・ティルソン・トーマス、打楽器のパートにはライヒ自身の仲間たち(「ネクサス」などのメンバーですね)が加わりました。その直後に同じメンバーでNONESUCHに録音されたものが、この曲のほとんど「定番」になっていましたね。その後、もう少し少人数でも演奏できるような「アンサンブル版」の楽譜も出版され、2001年にはそれによる録音も出ましたが、フルオケ・バージョンの新録音が出るまでには20年以上の歳月が必要でした。
5楽章から成るこの曲では、合唱が大きな役割を果たしています。その前の作品でもお馴染みだった、スキャットによるパルスがアンサンブルとして楽器のように使われる他に、ここではテキストを使ってしっかり具体的なメッセージを伝えるということも行っているのです。真ん中の長大な第3楽章では、まるでサイレンの音のような、ライヒにしては珍しい「連続した」音型まで披露していますからね。
今回の演奏、その合唱がなにか冴えません。そもそも、第1楽章の途中から合唱が入ってきたように聴こえたので、わざわざNONESUCH盤を引っ張り出して聴き直してみたのですが、そこでは確かに楽章の頭からはっきり合唱が聴こえてきました。バランスが全然違っていたのですね。この曲でのライヒの合唱に対する要求はかなり過酷です。NONESUCH盤でも、それに完全には応えられていなかったのですが、今回はそれに輪をかけての情けなさです。高音は出ないし、テンション・コードは決まらないし、アインザッツもざっつ(雑)です。
おそらく、ヤルヴィは、ライヒに対するアプローチが、MTTとは全く違っていたのではないでしょうか。それは、緊密なアンサンブルよりは、なにか暖かさのようなものを求める姿勢だったのかも知れません。それは「砂漠の音楽」ではあまりうまく行かなかったものが、カップリングの「3つの楽章」では見事な成果となって現れています。弦楽器の豊かな響きと表現力からは、ライヒに対する新たな可能性が間違いなく感じられます。

SACD Artwork © Chandos Records Ltd
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by jurassic_oyaji | 2011-06-20 20:45 | 現代音楽 | Comments(0)