おやぢの部屋2
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EŠENVALDS/Passion and Resurrection
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Carolyn Sampson(Sop)
Stephen Layton/
Polyphony
Britten Sinfonia
HYPERION/CDA 67796




スティーヴン・レイトンがこのレーベルで紹介してくれる合唱作曲家たちは、常に新鮮な感動を与えてくれていました。先日来日した、今をときめくエリック・ウィテカーにしても、最初に触れたのは彼らの演奏でした。今回は、すでに合唱界ではかなり有名になっていて楽譜も広く出回っている、1977年生まれの俊英、ラトビア出身のエリクス・エシェンヴァルズです。
ラトビアといえばサロンパス味の炭酸飲料(それは「ルートビア」)ではなく、「バルト三国」として、エストニアやリトアニアと一緒に語られることが多くなっています。ですから、エストニアを代表する作曲家、アルヴォ・ペルトの後継者のような言い方も、一部ではされているようですね。だったら、とりあえずそんな先入観を持って聴き始めたって、別に構わないはずです。
確かに、アルバムタイトルである、2005年の作品「受難と復活」では、そんなペルトのエピゴーネンのような面は感じられました。弦楽合奏で合唱を彩るというやり方も、多くのペルトの作品には見られること、そんな、少しモノフォニックなヒーリング・サウンドは、間違いなくペルトを意識したものなのでしょう。しかし、エシェンヴァルズの場合は、そこにちょっとした「ズレ」が加わっているのですね。合唱と弦楽器は、寄り添うようでいてそれぞれが全く別のことをやっています。リズム的にもズレていますし、調も全然関係のないものになっています。一見ヒーリングに見えて、そこにはポリリズムやポリコードが織りなす不思議な緊張感が漂っているのですね。これは間違いなく彼の個性なのでしょう。
ただ、ここでソロを歌っているサンプソンが、そんな緊張感を意識しないであまりにノーテンキな歌い方に終始しているために、全体のテイストがヒーリングっぽくなってしまっているのが残念です。
ですから、彼の魅力が満喫できるのは、その他の無伴奏の曲ということになります。「ポリフォニー」のメンバーは、ここでは、それぞれに興味あふれる手法を見事に表現してくれています。まず「Evening」と「Night Prayer」という2曲は、それこそウィテカーのようなデリケートな和声をふんだんに使った流れるような美しい曲です。たとえば、アマチュアの合唱団がコンクールの自由曲に選んでしっかり練習すれば、その合唱団のスキルが間違いなく向上するのでは、と思えるような、「歌いごたえ」のある曲なのではないでしょうか。もちろん、各声部のバランスといい、音色のまとめかたといい、かなり敷居は高いものですから、ある程度以上の実力のある合唱団でなければ結果は悲惨なものに終わることは目に見えています。
次の「A Drop in the Ocean」は、多くの要素が幾重にも集まったスリリングな曲です。口笛のSEにラテン語のほとんど「語り」のような単旋律が絡み、そこに詩篇や、マザー・テレサの言葉がテキストになった合唱が加わる、という入り組んだ構造を持っています。そこから生まれる混沌と、テキストの持つメッセージ性とが相まって、言いようのない感動を生んでいます。この中で歌われるメンバーによるソプラノ・ソロもとても美しいもの、この合唱団の層の厚さを感じさせます。
Legend of the Walled-in Woman」という曲は、アルバニアの伝説をテキストにして、音楽素材もアルバニアの民族音楽が使われているという、ちょっと他の曲とは異なったテイストを持っています。民族的な素材と、洗練された澄みきったハーモニーとの対比が聴き物でしょう。作曲家の幅広いバックグラウンドがうかがえます。そして、それをこともなげに歌い分けている合唱団のすごさにも、改めて感服です。
最後は2010年に作られた新作「Long Road」です。これもそれまでとはガラリと変わった曲想、まるでジョン・ラッターのようなシンプルでメロディアスな世界です。これだったら、並の合唱団でも手がつけられそう。

CD Artwork © Hyperion Records Limited
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by jurassic_oyaji | 2011-06-22 19:48 | 合唱 | Comments(0)