おやぢの部屋2
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UNIKO
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Kronos Quartet
Kimmo Pohjonen(Accordion, Voice)
Samuli Kosminen(Programming)
ONDINE/ODE 1185-2




とりあえず、タイトルは「UNKO」だと思っていました。ジャケットはいかにもな茶色の汚物という感じでしたし、赤い線は「血○」でしょうか。別にそういう嗜好はありませんが、フィンランドの名門レーベルのことですから、なにか深い考えがあってのことなのだろうな、と、変な好奇心がわいてきます。「うん、これは面白そうだ!」とか。
ジャケットを開くと、一応ブックレットが挟まっています。しかし、そこにはアルバムに関するコメントなどは一切ありません。見開きで霧の立ちこめる海の写真があるだけ、あとはクレジットしか記載されていません。しかし、全く聞いたことのないアーティストの中に「クロノス・カルテット」の名前があったので、ちょっと興味がわきます。その他にも「サンプリング」やら「プログラミング」といったタームが見受けられましたので、おそらく彼らの興味の対象がそのあたりのテクノロジーにまで及んだ成果が聴けるのではないか、という期待もありました。
トラックリストによると、このアルバムは全部で7つの部分に分かれているようです。そのタイトルがフィンランド語というのが、えらくローカルな感じ、訳してみると、それらは「ミスト」、「プラズマ」、「エッジ」、「死」、「恐怖」、「母」、「広大」というものであることが分かります。なんだか、これだけで曲のコンセプトが分かったような気になってしまいます。最初の「ミスト」が、写真と対応しているのでしょうね。あとは様々なヘビーな体験を乗り越えて平安の境地にたどり着く、とか。
というより、こういうジャケット構成やタイトルを見ていると、なんだか1970年代あたりの「プログレッシブ・ロック」のテイストに近いものが感じられてしまいます。「イエス」とか「ピンク・フロイド」ですね。
確かに、聴き始めるとそんな予想は裏切られなかったことに気づきます。最初に聴こえてきたのは、それこそ霧の立ちこめる描写には欠かせないSEでした。何やら思わせぶりな弦楽器のサンプリングなどが登場したりして、そこには「サウンドスケープ」のようなものが広がります。と、いきなり曲調が変わり、「3/3/2」というありがちなビートに乗ったアップテンポの音楽になりましたよ。これはまさに「プログレ」の世界です。ただ、いにしえの「プログレ」と違うのは、テクノロジーの進歩によってもたらされた、けた違いに多様性をもったサウンドです。
曲のコンセプトは、キンモ・ポホヨネンとサムリ・コスミネンというフィンランドのミュージシャンが作ったものなのでしょう。ポホヨネンは自らのアコーディオンや、様々な「声」で演奏に加わります。クロノス・カルテットが演奏するための譜面も、彼が用意したのでしょう。しかし、それらは単に「素材」として提供されたもので、それらをサンプリングし、別の音源とともにプログラミングを行うのは、コスミネンたちの仕事、かくして、うす暗いクラブに大音量で鳴り響くにはもってこいのサウンドが生まれました。
これは、なかなか気持ちの良いものです。時たま聴こえてくる弦楽四重奏は、確かにリリカルな側面を持っていますが、それが腹の底に響き渡るビートの中にあると、全く別のアグレッシブなパーツとして感じられるようになってくるのです。今のようなムシムシする季節のなかでは、ひときわ刺激的な清涼感を味わうことが出来るはずです。
これも予想通りのことでしたが、そんなある意味破壊的な音楽は、最後に向けていとも穏やかに集結していきます。こんな安直さも、確かに「プログレ」の持つ一つの味でした。いや、そもそもそんなコンセプトはベートーヴェンの時代から音楽の中にはあったものなのです。そんな「甘さ」が、「震災後」という今の状況で音楽が「力」になりえない原因の一つとなっているのでは、と考えるのは、決して見当外れのことではありません。

CD Artwork © Ondine Oy
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by jurassic_oyaji | 2011-07-04 19:53 | ポップス | Comments(0)