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ビートルズのビジネス戦略
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武田知弘著
祥伝社刊(祥伝社新書
244
ISBN978-4-396-11244-8



40年以上前に解散、もはや4人のメンバーのうちの2人は他界し、残りの2人も今でも真摯に音楽に携わっている紳士は1人だけという状態になってしまったイギリスのバンド、「ザ・ビートルズ」ですが、彼らが残した多くの作品はいまだにごく普通に「ヒット曲」として聴かれています。つまり、彼らは間違いなく「成功した」バンドと言えるわけですね。そこで、あまたの「ビートルズ本」に、こんな「ビジネス本」的なアプローチのものまでが加わることになりました。
タイトルの通り、この本の前半では、「ビジネス」の「お手本」として、ビートルズが語られます。彼らが多くのヒット曲を作り、それを収めたレコードが途方もないセールスを上げるに至る要因を、まさに「ビジネス」としての視点から検証していこう、という、なんとも陳腐なプランなわけですね。正直、このあたりの、アーティストとしてのビートルズと、それを支えたプロデューサー、マネージャー、A&Rマンといったスタッフたちが「成功」を勝ち取るためにはどんなことをやっていたのか、そして、それを実際に「ビジネス」に「応用」する時にはどのような形になるのか、といった話は、あまりにも即物的すぎて、なんの面白みもありません。もっとも、「ビジネス書」というのはそもそもそんなものなのでしょう。今まで散々言い古されてきた彼らの成功譚も、視点が変わるとこんなにもつまらなくなるのか、という、一つの見本だとおもって、我慢して読む他はありません。
それにしても、曲を作る、という、いわば「ビジネス」にはまったくなじまない行為を、そのまま「ビジネス」に持っていくやり方は、なんとも無神経、そのために著者は、彼らの素顔をかなり自分勝手に都合のよい姿に変えたうえで、自らの論理のつじつまを合わせるというやり方を各所で披露しています。事実がそんなに単純なものであれば、誰も苦労はしません。
そこに何の脈絡もなく「ユダヤ人はなぜ商売が上手なのか」などという話題が登場する頃には、そこまでして原稿の枚数を水増ししたいのか、という怒りさえおぼえてきます。おそらく、こんな意味のない話をもってくるあたりが、「ビジネス書」の一つの手法なのかもしれませんね。
ところが、後半になって、著作権とか税金などの話になってくると、俄然話が面白くなってきます。おそらく、そこからは著者には苦手だったはずの「音楽」には触れることなく、純粋に「社会」や「経済」といった得意分野で勝負できるようになってくるからでしょう。つまり、これこそは、今まで「音楽」サイドからビートルズのことを語ってきた多くの書物では得ることのできなかったことなのかもしれません。いや、確かにそれに近いようなことは見たことはありますが、これほどまでに徹底して「ビジネス」の視点からの言及というのは、めったに見当たらないのではないでしょうか。
そう思ってみると、これは著作権ビジネスの黎明期をリアルに描いた、優れたレポートのように見えてきます。さらに、著作権や税金、そしてレコード会社との契約条項をキーワードとして、彼らの「解散」を読み解く、という手法も、なんとも斬新に思えてしまいます。彼らの作品のほとんどにクレジットされている「レノン/マッカートニー」にはどんな意味があったのか、そして、そこにはどのような思いが込められていたのか、そんなことまでたかが「ビジネス書」に教えられるとは、思ってもみませんでした。まあ、本の値段の半分ぐらいの価値はあったのではないでしょうか。
蛇足ですが、「レノン/マッカートニー」というのは、昔バカな作曲家が言っていた「J.レノン作詞、P.マッカートニー作曲」という意味ではありませんからね。

Book Artwork © Shodensha
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by jurassic_oyaji | 2011-07-08 20:10 | 書籍 | Comments(0)